松江市は、島根県北東部にある市。東は鳥取県境港市、東南は安来市、南は雲南市、西は出雲市に接し、北は日本海に面する。県庁所在地。
 JR山陰本線、国道9号が宍道湖、中海の南岸を並走。宍道湖北側を国道431号、一畑電車北松江線が並走するほか、国道54号、432号、485号、山陰自動車道が通じ、矢田、松江東、松江中央、松江西、松江玉造、宍道の6インターチェンジがある。また、宍道ジャンクションで松江自動車道と連結する。
 市域は島根半島の東半分を占める。宍道湖の東半分を取り囲んでおり、東は中海に接し、中海にある大根島と江島を含む。南は中国山地に及ぶ。宍道湖・中海・堀川など多様な水域に恵まれている。城下町である市街地は宍道湖と中海を結ぶ大橋川の流域に広がっており、この大橋川で南と北に二分されている。日本海に突出する島根半島部は、北山山地を越えて海に面し、複雑なリアス式海岸線をもっており、南部は大部分が丘陵の多い農村地帯。市街地に接する南北部は標高50m以内の丘陵状の山地で市街地東部には嵩山がある。湖北地帯は丘陵状山地が北に向かって急峻な山地となり日本海側に傾斜。湖南地帯は丘陵状山地となっている。
 1889年(明治22)市制施行。周辺町村の編入を繰り返し、2005年(平成17)6町1村を合併、2011年(平成23)東出雲町を編入して現在の市域となる。地名の由来は、慶長16年(1611年)堀尾吉晴が亀田山に城を築き、白潟・末次の二郷をあわせて松江と称したことにはじまる。古代出雲の中心地として早くから開け、奈良時代には国庁や国分寺が置かれた。戦国時代末期には毛利氏がこの地を支配したが、江戸時代には堀尾氏2代・京極氏1代・松平氏10代の城下町として栄え、今日の都市の基礎が形成された。現在も城下町としての遺構がよく残り、とくに城北の塩見縄手は内堀に沿って武家屋敷が続き、往年のおもかげを伝えている。昭和26年(1951年)には松江国際文化観光都市建設法が制定され、奈良市・京都市と並んで国際文化観光都市となった。平成7年(1995年)には出雲・宍道湖・中海拠点都市地域に指定され、山陰の中核都市として発展している。
 商業が中心で商店数、従業者数、販売額とも県内でもっとも多く、商圏は鳥取県にも及ぶ。農業は米作のほか、野菜、果樹、茶などの栽培が行われる。漁業は宍道湖や中海の内水面漁業、日本海での沿岸漁業のほか、鹿島町恵曇漁港を基地とする沖合漁船団の乗組員も多い。美保関にも片江や千酌などの良港があり、片江は機船底引網漁業の発祥地でもある。1929年設立の片倉製糸(現、片倉工業)や、松江松下電器(現、パナソニックエレクトロニックデバイスジャパン)のほかは中小の企業が多い。伝統工業には、めのう細工、八雲塗、出雲石灯籠などがある。
 古代出雲文化の発祥の地であることから古社や出雲地方最大規模の古墳である山代二子塚(国の史跡)はじめ、岡田山古墳、安部谷古墳(ともに国の史跡)、旧石器時代の空山遺跡、鹿島町地区に佐太講武貝塚(国の史跡)や玉湯町玉造の出雲玉作跡(国の史跡)周辺に古墳が多く残り、史跡公園となっている。松江城(国の史跡)の天守閣は桃山初期の特徴を残し国宝に指定されている。7代藩主の松平治郷は不昧(ふまい)と号した茶人として知られ、不昧公ゆかりの菅田庵(国史跡・名勝)の茶室菅田庵と向月亭は国指定重要文化財。塩見縄手の小泉八雲旧居は国指定史跡で、隣接して小泉八雲記念館がある。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は1890年(明治23)から1年余の間松江中学で教鞭をとるかたわら、『知られざる日本の面影』などで松江の風土を広く世界に紹介した。国指定重要文化財に神魂神社本殿(国宝)など、国指定史跡に出雲国山代郷正倉跡などがある。同市は戦災を受けていないことから城下町の遺構としての文化財も多く残る。この他、県立美術館、田部美術館、松江歴史館、くにびきメッセ、安部榮四郎記念館などの文化施設もある。日本海沿岸の加賀ノ潜戸(国名勝・天然記念物)や美保ノ北浦(国名勝)は大山隠岐国立公園の一部、玉湯川沿いには玉造温泉がある。中海と宍道湖は2005年(平成17)に、ラムサール条約登録湿地となった。年中行事では、城山稲荷神社で10年に一度行われる船神事のホーランエンヤや、江戸時代に始まるといわれる鼕行列、佐太神社の佐陀神能(ユネスコの無形文化遺産)、美保神社の青柴垣神事や諸手船神事などが有名。

観光資源一覧

多古の七ッ穴の写真

写真提供:松江市

多古の七ッ穴 (島根県 松江市 )

島根半島の最北を占める多古鼻にある日本海の荒波によりつくられた海食洞。集塊岩と凝灰岩の互層からなる高さ50m、延長400mにわたる絶壁に、海食によってできた大小4つの洞窟がある。これらの洞窟の入口は高さ約10mほどで、計9個あり、洞内へ小舟を乗り入れることができる。海上から一度に見える穴が7つなので七ツ穴と呼ばれる。  多古鼻一...

加賀の潜戸の写真

写真提供:しまね観光ナビ

加賀の潜戸 (島根県 松江市 )

JR松江駅から北へ約13km、日本海に面する潜戸鼻にある海岸景勝地。集塊岩及び凝灰質集塊岩からなる潜戸鼻にあり、新潜戸と旧潜戸がある。『出雲国風土記』によると、佐太大神の母神きさ貝比売(きさがいひめ)が、「闇き岩屋なるかも」といって金弓で射抜いたので洞が明るくなったと伝わる。  地殻変動による断層などに海食作用が加わって生...

八重垣神社の写真

写真提供:西村愛

八重垣神社 (島根県 松江市 )

JR松江駅から南へ約4km。素盞嗚尊(すさのおのみこと)が八俣遠呂智(八岐大蛇)*を退治した後、須賀(現在の須我神社*)の地に至り、「私の心はすがすがしくなった」と述べ、その地に宮を建てた時にそこから雲が立ち上った。その時に歌った歌、「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」(1番歌)を社号の由来とする...

月照寺の写真

写真提供:西村愛

月照寺 (島根県 松江市 )

松江城の西に位置し、松江松平家の初代藩主である松平直政が母月照院の冥福を祈って1664(寛文4)年に建立し、以後松平氏の菩提寺となった。境内には多数の燈篭を従えた歴代藩主の廟が並んでいる。特に、小林如泥(こばやしじょでい)作の松江藩7代藩主である不昧(ふまい)公の廟門をはじめ、すぐれた廟門建築が見られる。  不昧公は木工...

熊野大社の写真

写真提供:しまね観光ナビ

熊野大社 (島根県 松江市 )

JR松江駅から南へ約10km、意宇(いう)川の左岸、山を背にして社殿が立つ。『出雲國風土記』733(天平5)年に熊野大社、『延喜式神名帳』927(延長5)年に熊野坐神社とあり、日本火出初神社(ひのもとひでぞめのやしろ)とも称され、古来、杵築大社(出雲大社)と並んで出雲の國の大社と遇された。   朝廷の尊崇が極めて篤く、851(仁壽元...

美保神社の写真

写真提供:西村愛

美保神社 (島根県 松江市 )

島根半島の東、美保関港を目の前にする山麓にある。創建は未詳だが、「出雲国風土記」(733(天平5)年)に記載のある古社。事代主神(ことしろぬしのかみ)の総本宮で、母神である三穂津姫命(みほつひめのみこと)をともに祀る。事代主神(ことしろぬしのかみ)は大国主命の第一子といい、えびす様の名で知られ、漁業及び海上安全の神とし...

松江城の写真

写真提供:西村愛

松江城 (島根県 松江市 )

宍道湖の北、標高28mの亀田山にあり、別名千鳥城の名をもつ。関ヶ原の戦いののち、出雲・隠岐に封ぜられて富田城(とだじょう)に入った堀尾吉晴(ほりおよしはる)が、1611(慶長16)年に築城*したものである。現在も天守閣*と石垣を残している。  城跡は城山(じようざん)公園と呼ばれ、桜の名所となっており、二の丸跡には松江神社、...

ホーランエンヤの写真

写真提供:松江市

ホーランエンヤ (島根県 松江市 )

松江市内を流れる大橋川などを舞台にして10年ごとに行われる、松江城山公園内にある「城山稲荷神社」の式年神幸祭。  ホーランエンヤは「松江城山稲荷神社式年神幸祭」の通称で、神事で使われる櫂伝馬船(かいでんません)が櫂を漕ぐ時の掛け声から名づけられたとも、また「豊来栄弥」から生じたことばとも言われている。  1648(慶安元...

玉造温泉の写真

写真提供:玉造温泉旅館協同組合

玉造温泉 (島根県 松江市 )

JR山陰本線玉造温泉駅から車で約5分、宍道湖畔から2km弱の距離にある温泉街。低い丘陵の間を北流する玉湯川に沿って、旅館、土産物屋、足湯などが1kmほど並ぶ。  温泉の歴史は古く、今から約1,300年前、奈良時代に記された『出雲国風土記』に、「ひとたび濯(すす)げば すなわち形容端正(かたちきらきら)しく、再び沐(ゆあみ)すれ...

松江の奉書焼きの写真

写真提供:西村愛

松江の奉書焼き (島根県 松江市 )

濡らした奉書紙*にスズキを包んで蒸焼きにしたもので、冬に産卵のため宍道湖へ上るスズキを使うのが本来の奉書焼きである。  漁場を視察中の松江藩主松平治郷(不昧)が、漁師がスズキを焼いて食べているのを見て所望され、灰がついたままでは失礼だと奉書にくるんで献上したことに始まる。  市内のおもな旅館や料亭のコース料理などに...

大根島のボタンの写真

写真提供:日本庭園 由志園

大根島のボタン (島根県 松江市 )

大根島は多孔質の玄武岩を基盤とするアスピーテ型の火山島である。ゆるやかな斜面の大部分は畑であり、特産の雲州人参や牡丹の花が育てられている。牡丹は約300年前、全隆寺住職が遠州(静岡県)の秋葉山へ修行に訪れ、その際に持ち帰って境内に植えたのがはじまり。当時は薬用として使われていた。現在では改良が行われ、500種を超える品種...

佐太神社の写真

写真提供:宗教法人佐太神社

佐太神社 (島根県 松江市 )

地誌『出雲国風土記』に「佐太大神社(さだおおかみのやしろ)」と記載され、出雲国二ノ宮として、また出雲国三大社として讃えられてきた神社である。大社造りの本殿3殿並立の形は平安時代の末頃に遡るとされ、現在の本殿は文化4年に建て替えられたもの。正中殿の規模は正面・側面ともに約5.5mで、大社造りの中でも出雲大社に次ぎ、国宝の神...

島根県立美術館の写真

写真提供:島根県立美術館

島根県立美術館 (島根県 松江市 )

1999(平成11)年に宍道湖畔に開館した美術館。県庁第三庁舎(旧県立博物館)や県立図書館など、島根県内に多くの建築を遺す菊竹清訓(きくたけきよのり)が設計した。  穏やかなカーブを描く大屋根に円形の開口部があり、展望テラスが作られている。建物から宍道湖が見えるようにガラス張りになっており、夕日が鑑賞しやすい設計となって...

宍道湖のシジミ漁の写真

写真提供:しまね観光ナビ

宍道湖のシジミ漁 (島根県 出雲市 / 島根県 松江市 )

島根県北東部に位置し、出雲平野を流れる斐伊川(ひいかわ)を主な流入河川とする宍道湖は、東西約17km、南北約6km、周囲47km、全国第7位の面積をもつ汽水湖である。  宍道湖で獲れるシジミは「ヤマトシジミ」*で、全国1位の漁獲高を誇り、島根県全体で全国の4割ほどを占める。   シジミ漁は資源保護のため、1週間で4日しか行わず、漁...