函館市は、道南西部にあり、西は北斗市、七飯町、鹿部町と接し、東・南・北の三方は太平洋に囲まれ、南は津軽海峡に臨み、西は函館湾をいだく。
 北海道の南の玄関口で函館港、函館空港があり、函館駅はJR函館本線の、五稜郭駅は道南いさりび鉄道線の起点。沿岸部を国道278号が通る他、国道5号、227号、228号、279号が通じ、函館新道と函館江差自動車道の函館インターチェンジがある。中心市街地には市電(路面電車)が通る。フェリーが函館港と青森港間、大間港(青森県)間に就航。クルーズ船も寄港している。函館空港は東京、大阪、名古屋、札幌、奥尻、台北などの定期便がある。
 渡島半島の南東部にあたる亀田半島に位置。中西部は袴腰岳、標津岳山麓の洪積台地で、南西部の津軽海峡に突き出た函館山との間の砂州上に中心市街地がある。函館港は水深の大きい天然の良港。東部は山地や丘陵地が多く、東端の恵山岬には恵山がある。汐首岬、日浦海岸、武井の島など海岸一帯は恵山道立自然公園域。道南の政治、経済、文化の中心地。
 1922年(大正11)市制施行。1939年(昭和14)2町を編入後の変遷を経て、2004年(平成16)に現在の市域となり、2005年(平成17)中核市となる。初めウスケシ(アイヌ語で湾の端の意)とよばれていたが、1454年(享徳3)ごろ小豪族河野政通が函館山山麓に築いた館が箱の形にみえたところから箱館とよばれるようになった。松前藩領時代に亀田番所が置かれ、1802年(享和2)には幕府の箱館奉行設置、1854年(安政1)下田とともに日本最初の開港場となり、1859年(安政6)には横浜、長崎などとともに貿易港に指定されてアメリカ、イギリス、ロシアの領事館が置かれ、様々な外国の文化を取り入れてきた。1869年(明治2)に北海道開拓使出張所が置かれて箱館が函館に改められた。1908年(明治41)青函航路が開設され、大正時代に入ると北洋漁業の基地として発展。1934年(昭和9)には市の半分を焼失。太平洋戦争末期には空襲を受けたが、戦後、北洋漁業が再開された。
 漁業が主産業。イカ漁が中心で、コンブ、ワカメなどの海藻類、カレイ、ホッケ、サケ、スケトウダラなどの水揚げもあり、水産加工業も盛ん。コンブ養殖、アワビ中間育成、ウニ種苗生産、ヒラメなどの魚類放流事業など栽培漁業もおこなわれている。また、白口浜のマコンブは良質で知られるほか、マグロ大謀網漁業発祥の地といわれる。農業は函館平野を中心に米作、ジャガイモ、ダイコン、ニンジン、シイタケ栽培などが行われる。この他、函館湾東岸は臨海工業地域で、水産加工、機械器具などの工場が立地する。なお、1984年(昭和59)函館テクノポリス開発計画が国に承認され、函館臨空工業団地、函館テクノパーク、テクノポリス函館上磯工業団地などを造成、研究施設や先端技術産業の誘致を図る。
 西欧文化の影響を受けた歴史的建造物が多く残る。函館山山麓は山の手とよばれ、洋風建造物や外国人墓地などに開港当時の名残をとどめている。ハリストス正教会は1860年(万延1)にロシア領事館付属聖堂として創建され、ビザンティン風の現在の建物(国の重要文化財)は1916年(大正5)に再建されたもの。旧函館区公会堂(国の重要文化財)、旧ロシア領事館、旧イギリス領事館(開港記念館)、中華会館、カトリック元町教会、旧道庁函館支庁庁舎(函館市写真歴史館)などの洋風建築、真宗大谷派函館別院(国の重要文化財)、高龍寺などの社寺、太刀川家住宅店舗(国の重要文化財)などの商店があり、旧金森洋物店は市立博物館郷土資料館となっている。ほかに函館市文学館(旧第一銀行函館支店)、市立函館博物館、函館市北方民族資料館などがある。函館港から山の手にかけての町並は「函館市元町末広町」として国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。1864年(元治1)建造の五稜郭(国の特別史跡)は日本最初の洋式城郭跡で、五稜郭と同じ洋式城郭の四稜郭は国の史跡に指定されている。函館八幡宮に近い地にある碧血碑には箱館戦争の幕府軍の戦死者が埋葬される。南部の海岸沿いの丘陵地にある1500年ごろの小豪族の砦だった志苔館跡(国の史跡)の他、国の名勝の旧岩船氏庭園(香雪園)、高野寺の木造大日如来坐像、旧遺愛女学校宣教師館、北海道志海苔中世遺構出土銭(いずれも国指定重要文化財)、アイヌの生活用具コレクション(国の重要有形民俗文化財)がある。上湯川町のトラピスチヌ修道院は1898年に創立されたシトー会に属する女子修道院。函館山へはロープウェーが通じ、頂上からは函館市街や函館港を一望でき、とくに夜景で知られる。函館山東側の立待岬には与謝野鉄幹・晶子夫妻の歌碑が立ち、大森浜の啄木公園には石川啄木の座像がある。温泉は、函館空港と中心市街地の間に位置する湯の川温泉、国民保養温泉地に指定されている恵山温泉郷や水無海浜温泉、川汲、磯谷、大船などがある。東部には恵山道立自然公園域がある。恵山南西麓には続縄文文化遺跡の恵山貝塚など、縄文時代の遺跡が残り、大船遺跡は国指定史跡、著保内野遺跡出土の「中空土偶」は国宝に指定されている。川汲公園はサクラの名所。台場山は箱館戦争の際に幕府軍が砲台を築いた場所として知られる。

観光資源一覧

北海道のカニ料理の写真

北海道のカニ料理 (北海道 札幌市 / 北海道 函館市 / 北海道 稚内市 / 北海道 小樽市 / 北海道 紋別市 )

カニの漁獲量は北海道が1位で全国の20%を占めている。  北海道産のカニといえばタラバガニ、花咲ガニ、毛ガニ、ズワイガニなどがある。かつては豊富に獲れたカニも、今では高級品である。  ゆでたての肉をそのまま食べるのがポピュラーだが、ほかにも本場北海道ならではのさまざまなカニ料理がある。  人気のタラバガニは、北海道では...

トラピスチヌ修道院の写真

トラピスチヌ修道院 (北海道 函館市 )

JR函館駅から東へ約9km、湯の川温泉から3.5km、上湯川町の緑の高台にあり、四方をめぐらす高い塀と赤煉瓦の建物の日本初の女子観想修道院。1898(明治31)年、フランスのウプシー修道院から派遣された8人の修道女によって創立され、その後1925(大正14)年と1941(昭和16)年の2回、火災に遭い再建したもの。  中では修道女が聖ベネディク...

五稜郭の写真

写真提供:函館市教育委員会

五稜郭 (北海道 函館市 )

五稜郭は、函館山から約6km離れた函館市のほぼ中央にある。1857(安政4)年、蘭学者武田斐三郎*の設計により蝦夷地防備と近代兵器の発達に対処するため、8年の歳月をかけて竣工したわが国最初の洋式城郭で、塁形が五つ星の形をしているところから五稜郭と呼ばれているが、建設当時には亀田役所土塁とも言われていたという。  外堀の幅30m...

函館山山麓周辺の街並みの写真

函館山山麓周辺の街並み (北海道 函館市 )

函館は、横浜・長崎とともに幕末最も早く開港し多くの外国人が生活していた。特に元町付近は海外との交流の場として開けた古い地区。函館山北東斜面の山の手にあり、現在でもハリストス正教会*をはじめ赤煉瓦や木造洋館*など、異国文化の影響を受けた明治の建築物が数多く残存し、風情ある町並みを見せている。  外国人墓地から旧ロシア...

金森倉庫群と末広町周辺の街並みの写真

金森倉庫群と末広町周辺の街並み (北海道 函館市 )

函館市末広町の海岸エリアを中心に、明治時代から昭和の雰囲気を残す石造り・煉瓦造り・木造の建物群が点在する。函館市電の大町、末広町、十字街、魚市場通の海岸線に、「太刀川家住宅店舗」、「相馬株式会社社屋」、「函館市北方民俗資料館」、「函館市文学館」、「はこだて明治館」などの古く雰囲気のある建物が続いている。  特に「金...

函館山からの夜景の写真

函館山からの夜景 (北海道 函館市 )

函館山は函館市街地の最南端にあり、津軽海峡に突出している。海中から噴火した火山であり、標高334m、周囲約9km、別名臥牛(がぎゅう)山とも呼ばれている。函館山は海の中から生まれた山であり、周辺の陸地とトンボロ*という現象で函館山直下の陸地が作り出され陸繋島*となった。山頂からは市街と港を一望でき、両側がくびれた市街地と両...

函館の朝市の写真

函館の朝市 (北海道 函館市 )

函館駅南側、約3万m2の一角に立ち並ぶ一般消費者、観光客向けの市場。1945(昭和20)年に近隣町村の農家が野菜や果物を持ち込み、函館駅前で立ち売りしたのが発祥といわれている。店舗数は周辺店舗を合わせて約250店舗。  カニやサケなど海産物や新鮮な海の幸の土産品を中心に、北海道ならではの鮮度の高い食品が一堂に集まる活...

函館八幡宮の写真

函館八幡宮 (北海道 函館市 )

室町時代に現在の元町、公会堂前あたりに創建*されたが1880(明治13)年に移転、函館市電の谷地頭(やちがしら)停留場から西に約400m、坂と石段の参道を上がった所にある。開運厄除や漁業、航海の守り神として知られている。本殿は聖帝造*と八棟造*を併せた聖帝八棟造であり、大正式八幡造の代表作と言われる。  八幡宮の南には、箱館...

函館山の写真

函館山 (北海道 函館市 )

函館山は函館市街地の最南端にあり、津軽海峡に突出している。標高334m、周囲約9km、別名臥牛*(がぎゅう)山とも呼ばれている。函館山は大古の火山活動によって生まれた山であり、周辺の陸地とトンボロ*という現象で函館山直下の陸地が作り出され陸繋島*となった。山頂からは市街と港を一望でき、両側がくびれた市街地と両脇の海の形状が...

函館のイカ料理の写真

函館のイカ料理 (北海道 函館市 )

海の幸に恵まれた北海道。中でもイカの漁獲量は国内屈指で、特に津軽海峡という豊かな漁場に恵まれた函館は、道内一のイカの産地*。イカを使った料理がふんだんに味わえる。  函館のイカは、一般的にはスルメイカのことをいい、北海道・東北地方ではこれを「マイカ」と呼んでいる。スルメイカは日本海を回遊する魚で、九州の西側、東シナ...

旧岩船氏庭園の写真

旧岩船氏庭園 (北海道 函館市 )

函館市街地の東の台地にあり、湯の川温泉やトラピスチヌ修道院に近くそれぞれ約3kmの場所に位置する。現在は面積約46万m2の見晴公園として市民に親しまれている。この地は函館市の豪商岩船峯次郎*の別荘で1989(明治31)年頃から庭園として整えられていたが、1927(昭和2)年に函館市民に無料開放され、現在は函館市に移管され函...