[Vol.4]群馬県を代表する山々

 群馬県民に県内の代表する山は何かと聞いてみれば、80~90%の人は「赤城山」と答えるであろう。県庁所在地の前橋市や高崎市からよく目立ち、間近に長い裾野を引いた山容にはほれぼれするものがある。
 東京から高崎に向かう時、関東平野の北側にはっきり分かる山としては、東から、男体山のピラミッド、ゆるやかで美しく広大な裾野を持つ赤城山、西側にはるかに高くそびえる浅間山が三本指に入る。
 山の形を見て山名が容易に指摘できるのは、赤城山の標高の高さと分かりやすい山の姿ゆえである。群馬県で最も標高の高い山は、栃木県境にある日光白根山(2578m)であるが、皇海山周辺の前衛の山々に隠れ気味なので、雪のかぶった時期に山頂部がわずかに見える程度である。赤城山は一目でその名前を指摘することができるが、残念なことに「赤城山」は群峰全体をさすものであり、赤城山のピークである黒檜山(1828m)がどこにあるのか分かりにくくなっている。赤城山の西側の榛名山も群峰で、掃部ヶ岳(1449m)が最高峰であるものの、指摘されにくいピークとなっており、その分かりにくさが欠点でもある。

赤城山

 群馬県を代表する山NO.2は谷川岳であろう。「魔の山」として数多くの遭難者、死者を出してきていることからも有名である。それだけに岩壁を登る魅力に富んだ山である。山容は双耳峰とよばれる二つのピークをもつ分かりやすさと、切れ落ちた岩壁の鋭さ、豊富な雪に輝くコントラストの姿が美しい。
 ただ、関東平野からは赤城山や子持山などの前衛の山に隠されており、沼田市やみなかみ町などに近づかないとその姿は拝むことができない。逆に、突然見せる姿に驚かされることも多い。筆者も沼田市の国道120号線の新鷺石橋から見える、利根川添いの谷川岳の姿に感激した。周辺には駐車できる場所がないので苦労したが。
 谷川岳の標高は1977m。山麓の600~800mあたりからは迫力ある姿が望めるが、周辺の2000mを超える山からは下に見下ろすためか、残念ながらその迫力は感ずることができない。谷川岳を登るにはロープウェーで天神平に至り、そこからの登山道で登るのがポピュラーであるが、迫力を感じるためには西黒尾根からがお勧めである。

谷川岳双耳峰

 NO.3の山は妙義山。標高は1104mと高くはないが鋭く尖った岩峰の姿が珍しく、オーバーハングしているように見える岩壁などに驚きを感ずる。
 妙義山の特に良いところは、上信越自動車道や国道18号線の中山道から、正面にこの岩峰の山が美しく望めるところである。国道18号線では松井田町周辺に妙義山を眺望できる駐車帯があり、松井田町の街並みの俯瞰と妙義山を仰ぎ見る絶好の写真撮影スポットがある。

妙義山

 上記以外で個性的な山は、山頂部が真っ平らなテーブルマウンテンの荒船山、信仰の山としてまた長大な城壁の様に見える武尊山、なかなか山頂を指摘しにくい皇海山などがあげられる。

荒船山

武尊山(沼田から)

皇海山(沼田から)

 最後に、私が好きな山は至仏山である。尾瀬ヶ原から見る至仏山は優しくたおやかで上品さを感じさせる。晴れの日の早朝、気温が下がると尾瀬ヶ原の湿原の水が朝靄となって幻想的な姿を見せる。
 尾瀬ヶ原からの至仏山は左右の山稜が比較的なだらかで優しく見えるが、山ノ鼻からの登山道は傾斜がきつく、なにかだまされたようである。2.5万分の1の地形図を見るとその訳が分かる。

尾瀬ヶ原と至仏山

筆者

林 清

東京工業大学工学部社会工学科卒業後、昭和46(1971)年財団法人日本交通公社に入社。平成15(2003)年財団法人日本交通公社常務理事、平成21(2009)年退任。
専門分野は観光計画・旅行動向。在任中は「旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究」などを担当。
高崎経済大学(2011~2019年)、立命館アジア太平洋大学(2008年~)にて非常勤講師を務める。
山岳をこよなく愛する。

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