熊野速玉大社くまのはやたまたいしゃ

熊野速玉大社はJR紀伊本線新宮駅の北西約1km、熊野川が急に蛇行して熊野灘にそそぐ河口近くに鎮座する。主祭神の熊野速玉大神は伊邪那岐命(いざなぎのみこと)、熊野夫須美大神は伊邪那美神(いざなみのみこと)であり、夫婦神である。熊野三山の中で最も多い18柱の神々を祀っている。祭祀の起源は神倉神社のゴトビキ岩とする説があり、神倉神社を元宮、速玉大社を新宮*とも呼ぶ。
 社殿は1883(明治16)年の火災後、仮社殿であったものを1953(昭和28)年に再建したもので、社殿配置は旧態とは多少変わっているものの、色鮮やかな丹塗りが目を引く。神門をくぐった正面に流造の社殿が1棟立ち、第一殿の結宮、第二殿の速玉宮が祀られている。その右には、第三殿の証誠殿、第四殿の若宮、第五殿の神倉宮の3殿を1社殿に祀る。結宮と速玉宮は主祭神を祀るもので、社殿はいわゆる熊野造となっており、前に拝殿が立つ。神倉宮の右側には流造の八社殿があり、第六殿から第十二殿の神を祀っている。
 熊野三山の中でも国宝・重要文化財に指定された美術工芸品などを最も多く所蔵しており、それらは神門外の神宝館などに収蔵され、一部を一般公開している。
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みどころ

熊野参詣は、本宮、新宮、那智と三山を巡拝するのが正式の参詣である。この場合、本宮~新宮間は熊野川を船で移動するのが習わしであった。この「川の参詣道」は、現在も語り部が同乗する「熊野川舟下り」として保存されており、木船で約90分間の船旅を楽しめる。熊野速玉大社近くの権現川原に自分の足で上陸し、往時の参詣者と同じ道筋で参拝するのもまた一興である。
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補足情報

*新宮:「熊野権現御垂迹縁起」(1164年長寛勘文)をはじめ諸書によると、熊野の神々は、神代の頃、まず初めに神倉山のゴトビキ岩に降臨され、その後、景行天皇58年(約2千年前)、現在地に新たに宮を築いてご遷宮になり、「新宮」と号したと記されている。(熊野速玉大社WEBサイトより)