草津温泉くさつおんせん

白根火山の東麓、標高1,200m付近の小盆地とその周辺に温泉街・ホテル街が形成されている。古くから湯治温泉として全国的に有名で、西の有馬温泉に対し、東国一の名湯といわれてきた。恋の病を除いてはどんな病気でも治るといわれている。現在では、志賀・草津高原ルート(国道292号線)の開通、スキー場やゴルフ場、コンサートホールなどの整備によって観光の基地、リゾート温泉地としての性格を強めている。旅館も近代的な装いを凝らしたものが増えているが、湯畑を中心とする湯の街には古い伝統につちかわれた湯治温泉の風格が感じられる。
 開湯については諸説あるが、鎌倉時代の1193(建久4)年、源頼朝による発見という伝説もあり、現在も源泉の一つに白旗源泉というものがある。江戸時代には8代将軍吉宗が湯を樽詰めにして江戸城まで運ばせ入浴している。いわゆる花柳病の湯治場として有名になったのもこの江戸中期以降のことで、幕末には「草津千軒江戸がまえ」とうたわれるほど繁栄をきわめた。この時代の「温泉番付」では常に東の大関(江戸時代では最高位)となっており人気を集めていた。その後1878(明治11)年、ドイツの医学者ベルツ博士*が訪れ、湯の薬効を高く評価し、理想的な高原療養温泉として世界にも紹介した。
 草津の温泉は約50~96度、酸性・含硫黄ーアルミニウムー硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型)※湯畑源泉。無色透明からやや白濁の温泉で、硫黄臭がありPH1.6~2.2の強酸性である。このため強い殺菌力で皮膚病などに特効があり、切傷・婦人病・リューマチにも効く。湯畑ほか100ケ所以上の源泉から自然に湧出する湯は毎分32,000リットル(2005(平成17)年現在)と、温泉の自然湧出量では日本一である。高温で湧出する源泉については熱交換システムで温度を下げ各旅館へ送られるが、この冷却に用いた水も60度の温水となって町のほぼ全戸に配湯されている。共同湯は22ケ所(2018(平成30)年現在、うち有料温泉は3個所)。
 温泉街の入口に3階建のバスターミナルがあり、JR長野原草津口駅・JR軽井沢駅、他東京からも直通バスが入る。草津温泉バスターミナルの3階には草津町温泉図書館(2015(平成27)年11月オープン)がある。
 年中行事やイベントも数多く行われ、草津温泉感謝祭(8月上旬)、草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル(8月中下旬)、雪の回廊ウォーク、他多数ある。
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みどころ

草津温泉の魅力は温泉そのもの、温泉情緒ただよう町並み、様々な新しい試み*とイベントの多さなどである。
 温泉は強酸性で殺菌力が強く、傷の回復をはじめとして様々な効能がある。また源泉が高温で湯量も豊富なため、基本的に源泉かけ流しである。「大滝乃湯」には湯温の異なる湯船の「合わせ湯(温度の低い湯船から徐々に温度の高い湯へ)」があり、様々な入浴の楽しみが体験できるのも魅力だ。
 草津温泉は、湯畑や周辺部の温泉情緒が豊かであり、ゆかた姿が似合う温泉町である。湯畑など多くの人が集まれる広場があることで、賑わいが生まれている。また、この湯畑から西の河原への土産品店の細道が続いており、この道すがら「温泉饅頭」「温泉卵」などを味わい楽しむことができる。
 町中には町民のための共同浴場が数多くあり、一部には一般の観光客も無料で入ることができる浴場もある。基本的には町民のための施設であり、感謝の気持ちを忘れないで温泉を楽しんでほしい。
 高温の湯を適温に下げる「湯もみ」をショーで見せ、観客も参加できる「熱乃湯」が湯畑に隣接して立地しており、夜も温泉街の魅力づくりとしての「草津温泉らくご」を行っている。
 その他の魅力として、夏の冷涼で湿度の低い快適な気象条件がそろっており、わが国トップクラスの夏の避暑地となっていること、様々な魅力ある観光ルートが存在し志賀高原、野反湖やチャツボミゴケ公園*への道、軽井沢、八ッ場ダム、上田市・長野市・佐久市などへのルートがとれることなども挙げられる。
 草津温泉には様々な魅力があるが、いくつかの工夫によってさらに魅力が高まるだろう。湯畑周囲の日本情緒をさらに磨くために、周辺建物のデザインや材質の統一が図られ、温泉街のそぞろ歩きが楽しめるように町づくりが進められている。
 上毛かるたでは「草津よいとこ 薬の温泉(いでゆ)」と草津節のフレーズでうたわれている。(林 清)
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補足情報

*ベルツ博士:ドイツ出身の医師で、明治政府に召還された「政府お雇い外国人」として来日。草津の温泉や気候などを絶賛し、草津温泉の医学的有効性を評価し世界中に紹介した。
*草津温泉の新しい試み
・1948(昭和23)年:わが国初のスキーリフトの導入(一般国民対象)
・1968(昭和43)年:温泉街から高原リゾートへの目標設定
・1969(昭和44)年:我が国初のペンション
・1975(昭和50)年:湯畑など温泉街の魅力付け・再整備の方向へ
・1979(昭和54)年:町民憲章「歩み入る者にやすらぎを、去りゆく人に幸せを」と定める。ドイツのローテンブルグ市にあるシュピタール門に刻まれた銘文「PAX INTRANTIBUS SALUS EXEUNTIBUS」を東山魁夷画伯が翻訳したもの
・1980(昭和55)年:草津夏期音楽アカデミー&フェスティヴァルの開催
・1983(昭和58)年:日帰り温泉施設(大滝乃湯) 開設
・1989(昭和64/平成元)年:我が国初の国有林のゴルフ場(草津高原ゴルフ場)完成
・1991(平成3)年:コンサートホール(草津音楽の森国際コンサートホール)完成
・1997(平成9)年:おかみさんグループの草津温泉の新たな魅力発見など様々な試み   
・2001(平成13)年:泉質主義宣言 草津温泉の魅力をアピール
・2003(平成15)年:サッカーJリーグ「ザスパ草津」への支援
・2009(平成21)年:草津温泉の夜の魅力のひとつとしての「草津温泉らくご」を始める
・2013(平成25)年:新しい日帰り温泉施設「御座之湯」
・2014(平成26)年:湯畑の駐車場を「湯路広場」に改装
*チャツボミゴケ:苔類ツボミゴケの一種。ツボミゴケは湿った土上、岩上や水中などに生育し花は口が狭く、つぼみ状。チャツボゴケは温泉の付近に多く、硫黄を含んだ水中に黄緑色~赤褐色の大群落をつくる。
関連リンク 草津温泉ポータルサイト(一般社団法人草津温泉観光協会)(WEBサイト)
参考文献 草津温泉ポータルサイト(一般社団法人草津温泉観光協会)(WEBサイト)
草津町(WEBサイト)
『草津町勢要覧2018』草津町

2020年04月現在

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