大田市は県中央部にあり、東は出雲市、西は江津市、南は飯南町、美郷町、川本町に接し、北は日本海に面する。
沿岸部にJR山陰本線、国道9号が通じ、内陸部に国道375号が通じる。
急峻な中国山地が海岸に迫っているため山林原野が多く、平坦地が少ない。海岸線は46kmに及び、岩場と砂場が交互に存在。南東に標高 1,126mの三瓶山、南西に808mの大江高山があり、これを主峰とする連山に囲まれた山間傾斜地が多く複雑な地形となっている。河川は山間地を縫うように走っており、三瓶川下流部の耕地が開けて市街地が形成されている。海岸部には久手砂丘、波根干拓地がある。
1954年(昭和29)大田町、久手町と6村が合併して市制施行。その後数回の合併があり、2005年(平成17)温泉津町と仁摩町を合併して新大田市となる。市名は『和名抄』の邑陀郷に由来する。山陰道、出雲街道、備後街道の交点の市場町として発達し、近世に牛馬市の成立、彼岸市の発生が伝えられる。仁摩町は中世の仁満郷の地だった。大森銀山の採掘をめぐって、江戸時代には天領となった。
農業は水稲と畜産、果樹、施設園芸等による複合経営が主体。畜産も盛んで、県内有数の畜産基地でもある。漁業は沿岸漁業を中心に営まれており、ワカメを特産する。石州瓦や家具、住宅建築関連の業種があり、石州大工や石見左官など建築技術にも古くから定評がある。この他、ゼオライト・ベントナイト・珪砂等、当市特有の地下資源が産出されている。
大森代官所跡、熊谷家住宅、温泉津温泉街の伝統的建造物、楡の木谷横穴群などの史跡や文化財のほか、大山隠岐国立公園の三瓶山や静間海岸の静窟やハマナス自生南限地、鳴り砂で知られる琴ヶ浜(国指定天然記念物)、日本遺産に指定された大江高山、鬼岩、岩海苔の採れる島津屋海岸、500万年以上前の火山活動による溶岩で形成された龍巌山や市指定名勝「掛戸松島」、国指定天然記念物「波根西の珪化木」などの自然資源がある。三瓶山を中心にした地域は登山、キャンプなどアウトドアの好適地として知られ、島根県立三瓶自然館などがある。温泉津温泉、三瓶(志学)温泉などの温泉群がある。世界最大の砂時計(一年計)が設置されている仁摩サンドミュージアムなどがある。農機具の売買や苗木市でにぎわう大田の彼岸市、物部神社(本殿は県指定文化財)の正月奉射祭、小笠原流田植え囃子(市無形民俗文化財)、等の伝統行事、キャンドルナイトin波根海岸、さんべ志学の雪あかり等の地域おこしイベントがおこなわれる。2007年(平成19)には大森町の銀鉱山跡と鉱山町をはじめ、銀山と二つの港を結ぶ街道(石見銀山街道)、銀・銀鉱石の積み出しに利用された二つの港とその集落などの旧跡が、「石見銀山遺跡とその文化的景観」としてユネスコの世界文化遺産に登録された。

観光資源一覧

三瓶山の写真

写真提供:大田市観光協会

三瓶山 (島根県 大田市 )

大田市街の南東約14km、出雲・石見の国境にそびえる鐘状火山群。最高峰は男(お)(親(おや))三瓶で1,126m、ほかに女(め)(母(はは))三瓶(953m)・子三瓶(961m)・孫三瓶(903m)などの6峰が、室の内*と呼ばれる火口を環状に囲んでいる。『出雲国風土記』*では国引きの柱となり、佐比売山(さひめやま)と記されているが、史上に...

石見銀山遺跡の写真

写真提供:大田市観光協会

石見銀山遺跡 (島根県 大田市 )

大田市域の南西の山峡にある、近世から近代にかけて栄えた鉱山遺跡。石見銀山は1527(大永7)年に九州博多の豪商神屋寿禎(かみやじゅてい)によって発見された。以後、室町・戦国の両時代を通じて、銀山は大内・尼子(あまこ)・毛利・小笠原4氏の、激しい攻防にさらされることになった。この結果、1562(永禄5)年ついに銀山の守り山吹城(...

物部神社の写真

写真提供:物部神社

物部神社 (島根県 大田市 )

JR大田市駅から南へおよそ5km。平安時代の法令集「延喜式」に記載のある式内社で、古来より文武両道の神・鎮魂の神・勝運の神と知られ、石見国一の宮として崇敬されてきた。古代の大氏族物部(もののべ)氏*がこの地方を開拓の折、祖神を祭ったのが起こりと伝えられ、御祭神の宇摩志麻遅命(うましまじのみこと)は、古くの大豪族で大和朝廷...

温泉津温泉の写真

写真提供:大田市観光協会

温泉津温泉 (島根県 大田市 )

JR温泉津駅の北、温泉津川に沿って細長く旅館が立ち並ぶ。1300年以上前に旅の僧侶が、湯気の立つ水たまりに浸かってひどい傷を癒やしている古狸を目にしたことから発見されたという説が広く知られている。  平安時代には京都までその存在が伝わり、14世紀以降には湯治客が大勢訪れるようになった。近くの温泉津港が、毛利氏支配の中世以降...

大森の町並みの写真

写真提供:大田市観光協会

大森の町並み (島根県 大田市 )

大森町は大田市域の南西の山峡にある。石見銀山が徳川幕府の天領となって以降、その繁栄により銀山柵内(さくのうち)の北側にあたる大森地区の建設へと発展し、支配の中心地も銀山地区から大森地区へと移っていった。奉行所が置かれ、石見銀山の行政と商業の中心地として町が整備された。  山間の狭い谷間に作られた町は、身分に関係なく...

ヨズクハデの写真

写真提供:大田市観光協会

ヨズクハデ (島根県 大田市 )

ヨズクハデは、その名の通りヨズク(フクロウ)のようなハデ*(稲を乾燥させるために干す際に用いる土台)のことを指す。大田市温泉津町西田地区に受け継がれる伝統的な干し方であり、秋の収穫期になると四角錐型に組んだ丸太に稲束が架けられた様子を見ることができる。その姿がフクロウが羽を休める姿に似ていることからヨズクハデと呼ば...