小野川湖おのがわこ

猪苗代湖の北、会津若松の市街の北東に聳える磐梯山の北麓には、磐梯高原あるいは裏磐梯と呼ばれる高原地帯におよそ300の湖沼群が点在する。そのなかで3番目の大きさの湖が小野川湖である。東側に桧原湖、西側に秋元湖があり、水面標高794m、周囲約9.8km、最大深度約22m、北東から南西に約4kmと細長い形をしている。
 小野川湖は、1888(明治21)年の噴火*で小磐梯という磐梯山の北側の山が山体崩壊し、西吾妻山からの小野川などが堰き止められて形成された火山性の堰止湖である。噴火時の泥流丘(流れ山)が湖中央部まで押し出している。水の流入は小野川など数本の河川と桧原湖からの排水で、流出は長瀬川のほかに、秋元湖へ隧道で流下させ水力発電に活用されている。
 小野川湖畔探勝路*(約6.1km 中級)が整備され、吾妻連峰の西大巓(にしだいてん)への登山口としても知られる。湖畔にはボートもある。
 アクセスは、猪苗代湖や喜多方と結ぶ国道459号線や吾妻山から福島に抜けるレークラインと、桧原湖の南から磐梯山西側の中腹を走り磐梯町と結ぶ磐梯山ゴールドライン(17.6km 有料道路)や桧原湖北岸と山形県白布高湯温泉を結ぶ西吾妻スカイバレー(17.8km 有料道路)が主要道路となる。冬季通行止めになる道路もあるので事前の確認が必要だ。
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みどころ

湖岸線は変化に富み、湖中には緑の小島が点在している。南岸を走るレークラインからは、湖沼とカラマツなどの樹林が織り成す美しい風景を見ながらのドライブになる。小野川湖畔探勝路は1888(明治21)年の噴火の影響を比較的受けていない地域で、ミズナラ、ブナやトチノキの巨木の生育が見られる。
 少し足を延ばすことになるが、落差25mの小野川不動滝があり、雪解け水で水量豊富の時期は豪快な姿を提供してくれる。
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補足情報

*噴火:1919(大正8)年発行の『耶麻郡誌』によると「明治二十一(1888)年七月十五日午前七時遠雷如き鳴動を生し遂に七時四十五分頃猛烈なる激動と共に小磐梯破裂し黒煙柱状をなし昇騰」したという。これにより「小磐梯山の山體は其大部分破壊飛散して其跡に北方に開けたる馬蹄形の爆裂火口を作りたり」とし、破壊噴出した岩石によって「田園財貨其害を被りたること少なからず 其岩塊泥土は北側に馳走し」秋元集落など数集落が埋没したという。さらに「桧原川・長瀬川の谷を堰塞して所々に流水を瀦留し桧原湖・小野川湖・秋元湖等を現出」させたと記している。死者は476人に達した。高村光太郎は、裏磐梯の風景を「二つに裂けて傾く磐梯山の裏山は険しく 八月の頭上の空に目をみはり 裾野とほく靡いて波うち 芒(すすき)ぼうぼうと人をうづめる」と『智恵子抄 山麓の二人』のなかで描写している。
* 小野川湖畔探勝路:西大巓、西吾妻中腹から木材を運搬するために走っていたトロッコの軌道敷跡を、トレッキングコースとして整備したコースで、湖の北西岸のミズナラの林間を歩く。また、湖の北にある1kmほどの「小野川不動滝探勝路」がある。