浦内川(西表島)うらうちがわ

沖縄県では本島に次ぐ面積を誇る西表島は、およそ90%が亜熱帯の自然林で覆われている。降水量が豊富なこの島には、大小あわせて40本以上の川がある。なかでも水量豊かなのが、西表島の北西部を流れる浦内川。古見岳(469m)に源を発し、テドウ山と波照間森の間を流れて東海岸に注いでいる。支流も含めて全長39kmあり、沖縄県内で最長の河川。魚類の種類が多く、日本でも有数の生物多様性の高い川でもある。上流には「日本の滝100選」に選ばれているマリユドゥ(沖縄の言葉で「丸い淀み」の意味)の滝、カンビレー(「神の座」の意味)の滝などがある。
 亜熱帯性常緑広葉樹の原生林が広がる浦内川流域は、イリオモテヤマネコなどの希少動物を含む八重山固有の動植物の生息地。下流や河口付近の両岸にはマングローブが群生している。マングローブとは汽水域と呼ばれる海の潮の影響を強く受ける場所に生える植物の総称で、日本国内で生育しているマングローブ植物7種すべてが分布しているのは西表島のみ。浦内川周辺ではメヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ヒルギダマシ、ヒルギモドキの5種類が生息している。森の巨人たち100選に選ばれた「浦内川のオヒルギ(推定樹齢300年)」も見ることができる。また周辺にはサガリバナ、サキシマスオウノキなどの亜熱帯特有の植物群落もある。
 河口部付近にウタラ炭坑跡があり、西表の炭鉱の歴史を垣間見ることができる。
 西表島へは石垣港から高速船で渡る。西部の上原港と東部の大原港へ向かう船があり、所要約40~50分。島内の移動はレンタカー、タクシーまたは路線バスを利用する。
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みどころ

上原港から、浦内川の河口から約1.6kmのところに架けられた浦内橋まで約5.5km、橋の上や近くの展望台から、川岸にマングローブが広がる亜熱帯の川の雄大な姿を眺めることができる。また橋の近くに遊覧船乗り場があり、8kmほど上流の「軍艦岩」まで船で行くことができる。
 そこから上流のマリユドゥの滝、カンビレーの滝までは徒歩で。マリユドゥの滝が見られる展望台までの往復で4~5km。急流がシダの茂る巨大な滝壺に段差を下りながら落ち込む様子を見ることができる。また200mほどの距離をゆるやかに流れ落ちるカンビレーの滝は、間近でその迫力が確認できる。滝が見られる場所までは歩道が整備されているので、亜熱帯の森のトレッキングを手軽に楽しめるコースでもある。下流ではカヌーのリバートレッキングも体験できるので、体力に合った方法で大自然の懐に飛び込みたい。
 遊覧船に乗って遡上すると、マングローブ以外にも、巨大なシダであるヒカゲヘゴや、オレンジの実をつけるアダン、ニッパヤシなど、次々に現れる亜熱帯の緑濃い植物に圧倒される。川辺を行き交うサギなど鳥の姿も見ることができる。
 河口近くは潮の干満の影響を大きく受け、水位が大きく変化するため、時間帯によって印象が大きく変化する。そのような環境で育つマングローブにはタコ足や人間の肘のような不思議なかたちの根があり、潮が引くとその根が現れ、独特の光景が広がる。
 開発されていない自然が残る魅力的な川であり、カヤックやカヌーなら支流に入って干潟に上陸することも可能。マングローブの種子や干潟の生きものに間近で観察する、そんな貴重な体験もできる場所だ。
関連リンク 竹富町観光協会(WEBサイト)
参考文献 竹富町観光協会(WEBサイト)
沖縄県(WEBサイト)
林野庁九州森林管理局沖縄森林管理署(WEBサイト)
『沖縄大百科事典』沖縄タイムス社、1983年
『ニッポンを解剖する!沖縄図鑑』JTBパブリッシング、2016年

2020年04月現在

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