金剛頂寺こんごうちょうじ

四国八十八ケ所霊場第26番札所。807(大同2)年に平城天皇の命をうけ弘法大師によって創建されたといわれる。室戸三山*において通称「西寺(にしでら)」と呼ばれる。金剛頂寺は、高知市方面から国道55号をバス停元橋西の信号で左折、集落を通って山道を2kmほどのぼった台地にある。
 駐車場から33段の女坂、42段の男坂、61段の厄除坂からなる石段をのぼると仁王像の置かれた門に至り、さらに21段の石段を上ると本堂などがある。堂内須弥壇(しゅみだん)中央の厨子に本尊の薬師如来を秘仏として祀っている(ご開帳は大晦日から1月8日)。護摩堂と御影堂は江戸期の建立。重要文化財の宝物類は霊宝館に収められている。
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みどころ

仁王門の右手、墓所付近からは、眼下に太平洋が広がり、東に室戸岬、手前に室戸の町が見える。土地の営みとのつながりを感じられる光景であると思う。弘法大師がこの地を選んで建立した。七堂伽藍を配する寺格の高い寺とされ、現在の室戸市全域にわたる寺領を持っていた。鎌倉時代には体制から逃れた人々を受け入れ「西寺乞食(にしでらこつじ)」と呼ばれた。戦国時代に衰退するが、近世には土佐藩主の庇護を受けた。大師堂は、本堂に背を向け足摺岬の方角に向いて建っている。これは「天狗問答(てんぐもんどう)」という弘法大師が魔物や天狗を追いやった伝説にならったもので、魔物や天狗を押さえ込むためである。
 本堂の北面、スダジイの古木の根に寄生する奴さんのような姿の西寺のヤッコソウは天然記念物。秋から冬に咲く。植物学者牧野富太郎が新種ヤッコソウとしたもの。
 室戸は江戸時代から「土佐古式捕鯨発祥の地*」として栄えたこともあり、境内に鯨の供養を目的とした2基の供養塔と一つの釣鐘がある。かつては捕鯨具類などが展示されていた鯨昌館(げいしょうかん)*もあった。これらもまた室戸らしい。
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補足情報

*室戸三山:第24番最御崎寺、第25番津照寺、第26番金剛頂寺の三寺で、空海悟りの起源の地と言われている。通称、最御崎寺は東寺(ひがしでら)、津照寺は津寺(つでら)金剛頂寺は西寺(にしでら)と呼ばれている。
*土佐古式捕鯨発祥の地:江戸時代から「土佐古式捕鯨発祥の地」として栄え、長い伝統を持つ。日本の捕鯨が興隆期を迎えた昭和期に、クジラとりの神様とも呼ばれた伝説の名砲手で、世界的に名を馳せたのが泉井守一(いずいもりいち)。金剛頂寺の境内にある供養塔1基と釣鐘は同氏より寄進されたもの。
*鯨昌館:現在、捕鯨具類などは道の駅吉良メッセ室戸にあるクジラ漁の資料館「鯨館」に展示されている。鯨館は、室戸とクジラの歴史をデジタル技術満載でご紹介する体感型資料館となっている。
関連リンク 四国八十八ヶ所霊場会(WEBサイト)
参考文献 四国八十八ヶ所霊場会(WEBサイト)
鯨館
『室戸観光ガイドブック』室戸市商工観光深層水課・一般社団法人室戸市観光協会 H27 パンフレット
『高知県の歴史散歩』高知県高等学校教育研究会歴史部会(編) 山川出版

2023年05月現在

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