土佐湾のクジラとさわんのくじら

近世から高知県東部の室戸を捕鯨基地に古式漁が行われてきた。1989(昭和64・平成元)年以降、湾中部から西部にかけてニタリクジラを対象としたホエールウォッチングが盛んになったという。土佐湾のニタリクジラは東シナ海系群に属し、夏季に九州南西部の沿岸を経て土佐湾まで移動する個体と春先から夏季にかけて土佐湾に来遊し同湾内に滞留する沿岸型の個体がいると考えられている。
 ウォッチング船は漁業者らの操船・ガイドでの運営が多いようだ。今日では室戸市の佐喜浜港、黒潮町の入野港、土佐市宇佐町のしおかぜ公園内、土佐清水市の窪津漁港にホエールウォッチング事業がみられる。ウォッチングセンターなどと称して店舗が構えられているほか、漁協や釣具店などが申し込み先となっている。4月後半から10月末までを出航時期としていることが多い。繁忙期は夏以降で特に夏休み時期には客も増え出航数も増える。高知大学の研究によれば、海面水温24度でニタドリクジラの出現率が上がるともいう。
 また、食文化としての鯨は捕鯨の規制がかかり全国的に流通量が減っているが、県内では調査捕鯨のミンク鯨の刺身、鍋、唐揚げなどが飲食店、スーパーなどで提供されているのが日常の風景である。
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みどころ

藩政時代からの捕鯨の伝統があり、民謡「よさこい節」の中にも「おらんくの池にゃ、潮吹く魚が泳ぎよる」という歌詞がある。「池」は土佐湾である。リアルに「海の貴婦人」ともいわれるニタドリクジラの潮吹きを見たいものだ。イルカならば群れで出会えることもあるという。陸上では県内の鯨関連の施設として室戸ドルフィンセンター、道の駅キラメッセ室戸の鯨館(資料館)、土佐市宇佐のくじらの駅などがある。また高知城内にかつての捕鯨の様子のみごとなジオラマが、捕鯨基地として名高かった室戸では廃校を活用した水族館内に捕鯨砲やクジラの骨格が展示されている。