可睡斎かすいさい

JR東海道本線袋井駅の北約4kmにある曹洞宗の巨刹。輪蔵や山門が建つ本堂前広場を本堂、禅堂、書院などがコの字状に囲み、その東側に萬松閣、瑞龍閣などが並ぶ。広い境内には古松・老杉が茂る。ただ、江戸期から明治初期にかけ、たびたび火災などに遭い、現在の堂宇は明治以降に再建されたものである。
 同寺は、1401(応永8)年に道元禅師7代法孫にあたる如仲天誾(じょちゅうてんぎん)がこの地に草庵を結んだのが始まりと伝えられ、永正年間(1504~1520年)に同地の城主久野宗隆を開基とし、大路一遵がこの草庵跡に再興したと言われている。可睡斎第11世(8世との説もあり)斎主等膳に至り、当時の浜松城主だった徳川家康の寄進により改築され、大伽藍を有するようになった。同時に寺号も可睡斎*1と改め、10万石大名同様の待遇を受けた。
 さらに、三河、遠江、駿河、伊豆の曹洞宗寺院の統括である四ヶ国僧禄司に任ぜられている。これは等膳が今川家の人質だった竹千代(のちの家康)を救い出してくれた旧恩に報いたからだと伝えられている。                            
 また、本堂の左手奥、一段高いところには1873(明治6)年の神仏分離令により秋葉山*2から遷座した秋葉三尺坊大権現が祀られている。可睡斎が秋葉總本殿とも称され、親しまれているのはこのためである。                                                                                
 花の名所としても知られるが、とくにボタンは有名で、4月中旬~5月上旬には60種、約2,000株が開花する。年中行事としては、1月~3月にひなまつり、8月28日の奥之院不動尊大祭、12月15日の秋葉の火まつりなどがある。境内には宿坊施設があり、精進料理を味わうこともできる。
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みどころ

広大な敷地に、本堂、大書院、開山堂、御真殿(秋葉三尺坊)、瑞龍閣などの多くの堂宇が複雑に建ち並ぶが、拝観する際は案内板の順路に従い巡ると良い。瑞龍閣では、1月から3月には供養として納められたお雛様が飾り付けられ、とくに32段1,200体のひな壇は圧巻である。
 また、国の登録有形文化財となっている大東司(お手洗い)は1937(昭和12)年に造られたもので、広々とした総檜造りの水洗トイレで必見。ボタンの名所として知られているが、紅葉も約1,000本が植えられており、11月中旬~12月初旬の紅葉期に訪ねるのも良い。
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補足情報

*1 可睡斎:寺号の由来は、家康に招かれた等膳が席上で気持ちよさそうにいねむりを始めた姿を見て、家康が「和尚の我を見ること愛児の如し、我その親愛の情を喜ぶ、睡る可し(ねむるべし)睡る可し」といい可睡和尚の号を与えたと伝えられているが、このエピソードの以前から可睡斎の寺号は使用されていたとも言われている。                                                                      *2 秋葉山:静岡県西北部、周智郡春野町にあり、秋葉山本宮秋葉神社が鎮座している。火防を司る秋葉三尺坊が祭られていたが、明治維新の神仏分離令により秋葉神社と秋葉寺に分けられた。この秋葉寺の御真体を遷座したところが可睡斎の秋葉總本殿である。なお、現在、秋葉山にも秋葉寺はあるが、明治半ばに新しく興された寺で、秋葉神社との関係はない。
関連リンク 可睡斎(WEBサイト)
参考文献 可睡斎(WEBサイト)
袋井市(WEBサイト)
『可睡斎護国塔保存修理報告書 2013年』宗 教法人萬松山可睡斎静岡県袋井市教育委員会
『可睡斎』パンフレット
『静岡県の歴史散歩』 静岡県日本史教育研究会=編 山川出版社

2023年10月現在

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