油山寺ゆさんじ

JR東海道本線袋井駅から北へ約6km入った山あいにある。山門を入ると正面の石段の上に書院、方丈があり、参道を左にとると三重塔*1・薬師堂*2がある山腹に至る。山腹に向かう途中は切通しや渓流、「るりの滝」があり、苔むした石段と鬱蒼とした杉の林がつづく。油山寺の名は、かつて「るりの滝」で油が湧出し「油の滝」とも称され、同山が「あぶらやま」と呼ばれていたことに由来する。                                                                        
 寺伝では、701(大宝元)年行基によって開創され、その後749(天平勝宝元)年孝謙天皇が眼病の際に行基が参道脇にある「るりの滝」の水を持ち帰り、清めたところ快癒したため、天皇の勅願寺となったという。旧記は焼失し詳細は不明であるが、中興の祖といわれる快雄の代の1574(天正2)年以降、法燈が継承されたことは明らかになっている。宗派は真言宗。                                                                                                   
 山門はもと掛川城の門*3で、1873(明治5)年、掛川城廃城に際し油山寺に移築されたものである。片潜門付櫓門で前後庇付入母屋造、屋根は本瓦葺きで左右に鯱が付いている。柱は60cm角以上のものが使われ、扉は横1.2m、縦2.4mの節のないクスノキの一枚板が用いられている。天井裏の墨書きから1659(万治2)年に建造されたことが分かっている。山頂の薬師堂は本尊の薬師如来*4と軍善坊大権現(健足の神)を祀っており、薬師堂より一段下にある三重塔は、朱塗り、銅板葺きで高さ約23m、上層は禅宗様式と大仏様式、中下層は和様式で建造され、上層に向かうほど塔身が細くなっている。
 当初の塔は、源頼朝の寄進により1190(建久元)年に建造したものといわれるが、その後に大破したため、1611(慶長16)年に再建された。
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みどころ

山門は城門だっただけにがっしりとした造りと豪壮さが目を引く。山門をくぐると、鬱蒼とした木立の中の境内に入るが、紅葉期の彩りは鮮やか。さらに参道を左に進むと、そこはまさに深山幽谷の雰囲気だ。渓流の先には「るりの滝」があり、その角を曲がると、石段の上に三重塔が小ぶりながら、安定感のある立ち姿でそびえ、周囲の緑に朱塗りが際立ち美しい佇まいである。さらに一段登ると、伸びやかな屋根が印象的な薬師堂に辿り着く。古刹の風格が漂う。
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補足情報

*1 三重塔:薬師堂と同じ1190(建久元)年の建立とされ、静岡県最古の層塔建築物といわれる。1967(昭和42)年から全解体修理を行い、1969(昭和44)年に復元竣工。  
*2 薬師堂:1190(建久元)年に建立されたと言われ、その後頽廃し、1738(元文3)年に再建された。1971(昭和46)年に修理修繕を行っている。  
*3 掛川城の門:大手二ノ門(玄関下門)で本丸と二ノ丸に通じる道筋にあった門。                                                                                                                                                                                       *4 薬師如来:本尊の如来像は金箔が施された入母屋造の厨子に納めらているが、この厨子は1588(天正16)年頃の作といわれ、今川義元の寄進と伝えられている。

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