浅間山あさまやま

長野・群馬県境にある日本を代表する活火山で、標高2,568m。白い噴煙を上げる浅間山の雄姿は古来から名高い。成層火山でいくつかの噴火跡の山塊が集中し、その総称を浅間山という。全体はなだらかな女性的な山相で、南・北に広大な裾野が延びて草木や樹木が茂り、標高2,300m以上は裸地となっている。また中腹から山麓にかけてはわが国でも有数の蝶の宝庫といわれ、ミヤマモンキチョウ・アサマシジミなどが生息する。
 浅間山はおもに安山岩からなる三重式のコニーデ*で、幼年期の地形を呈する。噴火を繰り返し、現在までに50回以上の噴火を記録している。洪積世にまず第一外輪山の黒斑山・剣ガ峰などを形成し、次いで寄生火山の小浅間山や石尊山を生じ、のち第二外輪山の前掛山などが作られた。
 特に1783(天明3)年の大爆発の前後に直径400m、周囲1.5kmの中央火口丘の釜山が形成されたと思われる。この天明の大噴火*は記録も多く残り、天明の大飢饉のきっかけにもなってよく知られている。この時に浅間山麓に大量の溶岩を流出して、「鬼押出し」を造り出した。
 現在浅間山の火山活動や火山性地震などの観測を行うため、1933(昭和8)年に東大火山観測所が峰ノ茶屋に設置されている。
 登山口は小諸の2ケ所で、浅間山荘と車坂峠からのコースがあり、浅間山の噴火警戒レベル*により登山活動の範囲が制限されている。
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みどころ

見る方向によって様々な姿を見せる。独立峰としてすっきりした姿を見せるのは東側から、特に二度上峠(にどあげとうげ)や浅間隠山からの景観。浅間山の柔らかい裾野と手前の浅間高原の姿の美しさに感激するだろう。南側の軽井沢、御代田、佐久平からは右側の浅間山から黒斑山(くろふやま)、高峰山、籠ノ登、湯の丸山、烏帽子岳までの連峰の姿が美しい。北側の嬬恋村からはキャベツ畑越しの浅間山の姿が絶好の被写体となる。
 また黒斑山からは湯の平越しの浅間山、特に少し雪をかぶった白く縦の線が現れる時期の浅間山がお勧めであり、日本離れした景観に感動すること必至である。
 噴火レベル1の時の前掛山までのルートは湯の平のやさしい景観と、そのあとの砂礫のジグザグの急斜面が厳しい登りとなる。途中の砂礫地帯の中にカラマツの新しい幼木が育ってきており、生命の復活を目の当たりにする。
 「小諸でてみりゃ浅間の山に、今朝も三筋の煙立つ」は小諸馬子唄の民謡で、信濃追分節にも浅間山がよく歌われている。軽井沢から信濃追分にかけての中山道の馬子の背景に浅間山がそびえている風景である。 
 火山であるが故に、周辺には数多くの温泉がある。天狗温泉*をはじめとして、高峰温泉、軽井沢周辺の温泉、嬬恋村の温泉など温泉巡りが楽しめる。(林 清)
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補足情報

*コニーデ:単純な円錐形をした成層火山をいう。長期間、ほぼ同一地点で繰り返される噴火により、火山砕屑物や溶岩流が積み重なってできたもの。
*天明の大噴火:このときの溶岩は北麓の集落鎌原を埋没させ、470人が犠牲となった。また火山砂礫・火山灰は軽井沢高原で1mも降下した地域もある。またこの噴火の灰で太陽が遮られ、穀物が大不作となり天明の大飢饉としても有名。
*噴火警戒レベル:火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と防災機関や住民等の「とるべき防災対応」を5段階に区分して発表する指標。レベル1は火口付近の立ち入り禁止、レベル2は火口から2km以内立ち入り禁止、レベル3は火口から4km以内の立ち入り禁止を薦めている。レベル1で前掛山まで、レベル2で黒斑山まで登山可。
*天狗温泉:鉄鉱成分が豊富に含まれた源泉で、最初は透明だが空気に触れて酸化すると赤褐色のお湯に変化鉄分を含んだ赤褐色の温泉となっている。
関連リンク 美しい村軽井沢(一般社団法人軽井沢観光協会)(WEBサイト)
参考文献 美しい村軽井沢(一般社団法人軽井沢観光協会)(WEBサイト)
火山活動の状況(浅間山)(国土交通省気象庁)(WEBサイト)
「長野県の山」 山と渓谷社
「信州山歩き地図Ⅱ」 信濃毎日新聞社
「現代日本名山圖絵」 実業之日本社

2022年09月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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