白根三山しらねさんざん

南アルプス*は、甲斐駒・鳳凰山系、白根山系、赤石山系の3つの大山系によって構成される。このなかでも、最も標高が高い白根山系が白根三山と呼ばれる。日本において富士山に次ぎ標高が高い北岳(3193m)、同じく第3位の間(あい)ノ岳(3190m)、そして農鳥岳(3026m)からなる。
 北岳は東側斜面の北岳バットレスと呼ばれる山頂から落ちる高さ約600メートルの岩壁で知られる。山頂付近では固有種の高山植物 キタダケソウが自生し、高山植物*も豊富だ。
 間ノ岳は白根三山の中央に位置し、山頂、山稜ともに広く、東側斜面に北沢カール、細沢カールが、また西側には三峰岳付近になるが左俣沢カール、東沢俣沢カールの氷河地形が展開する。さらに稜線部においては稜線が二重に並走する二重山稜も観察できる。山頂は静岡県との県境。静岡県側では大井川の源流を抱える。
 農鳥岳は、三山のうち、一番南に位置し、春から初夏に山頂の東面に白鳥のような雪型が現れることから、甲府盆地では農事暦の目安とされたというのが山名の由来という。山頂は東西二峰に分かれる複雑な地形を有している。
 白根三山への登山口は一般的にはJR中央本線甲府駅から芦安、夜叉神峠を越え、広河原*までバスで入り、北岳を目指す。三山を縦走する場合は、北岳、間ノ岳、農鳥岳を経て、早川町の奈良田に下山するか、またはその逆のコースを辿る。
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みどころ

白根三山の頂、稜線からは、南アルプスの山々はもちろん、中央アルプス、さらに北アルプスまで遠望でき、爽快な稜線歩きを楽しめる。もっとも素晴らしい景観は甲府盆地越しの富士山の眺望である。深田久弥の百名山では北岳山頂からの眺望を「北岳の大きな三角形の影が、大樺沢を距てた向こう側の山に次第に這い上がってきた。澄んだ空に、富士山はもちろん、南アルプスの山々が、私たちを取り巻くように勢揃いしていた」と描写している。また、間ノ岳については「大愚のように茫洋としている。(中略)山相は柔和で、尾根は広く、のんびりとした散策路のようであるが、一たん霧に包まれると方向が分からなくなる。油断のならない山」だとその印象を書き綴っている。
 芦安側から夜叉神トンネルを抜けると、深い白鳳渓谷の対岸に白根三山が眼前に聳え立つ景観は迫力満点。
 白根三山は、古くは古今和歌集や平家物語(巻之十)に「甲斐が根」、「かいのしらね(甲斐の白根)」などと記されているといわれているが、これは歌枕としてあるいは、東海道からの光景として使用されていることが多いので、白根三山を指すのかは定かではない。江戸時代後期編纂の『甲斐国志』では「白峰、此山本州第一ノ高山ニシテ西方ノ鎮タリ。(中略)南北へ連ナリテ三峯アリ。其北方最モ高キモノヲ指シテ、今専ラ白峰ト稱ス(中略)中峯ヲ間ノ嶽或中嶽と称」し農鳥山とも呼ぶとしており、現在の農鳥岳は「別當代」としてはいるものの、明確に「白峰」は白根三山と特定している。なお、「甲斐国志」では「甲斐が根」も白根三山を指すものだとしている。
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補足情報

*南アルプス:南アルプス地域は、日本列島がアジア大陸から離れる動きと北上するフィリピン海プレートや太平洋プレートの水平移動などによって激しい衝突及び圧縮の場となった。その結果、糸魚川―静岡構造線や本州中央部において逆「く」の字型の屈曲地形が形成され、100万年前頃から急激な上昇が生じた。その後の気候変動に伴い、この山系の各所で氷河地形が形成され、現在においても仙丈ヶ岳、間ノ岳、荒川岳、東岳などで見られる。
*高山植物:田中澄江の「新・花の百名山」では北岳の高山植物について、キタダケソウのみならず、「頂上に向かう岩礫地で、キンロバイ、イワオウギ、タカネマンテマ、オヤマノエンドウ、イワウメ、ムカゴユキノシタなど、北海道の山々を歩いているような花々に出あって、やっぱり北岳、ざらにはない花が出そろっていると感心」したとして、その豊富さを記している。
*広河原:芦安から広河原と奈良田から広河原間の林道は6月下旬から11月上旬までマイカーが規制されており、路線バス、乗合タクシー、一般タクシーのみ通行可能である。そのほかの期間は一般車両は通行止めになる。運転期間、時刻表、料金などについては、事前に確認が必要だ。また、登山道、ルートは自然災害などにより状況が変わることがあるので、登山には事前の確認が必要。
関連リンク 南アルプス市(観光推進課)(WEBサイト)
関連図書 「山梨県の山」山と渓谷社
参考文献 南アルプス市(観光推進課)(WEBサイト)
山梨県立大学「南アルプスと観光」 2013年度観光講座(WEBサイト)
深田久弥「日本の百名山」新潮社
「甲斐国志」国立国会図書館デジタルコンテンツ(WEBサイト)
田中 澄江.「新・花の百名山」文藝春秋

2024年07月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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