奈良田温泉ならだおんせん

JR身延線下部温泉駅から早川に沿って遡ること約38km、西山温泉の北約3kmのところにある。広河原とともに白根三山登山の根拠地であり、白鳳渓谷の入口にあたる。
 奈良田集落は奈良田湖*に臨み、周囲は2000から3000m級の山々に囲まれる山の里で、アクセスは一般車では早川沿いの県道(愛称:南アルプス街道)*となる。奈良田集落は奈良時代に孝謙天皇の行幸伝説*を持ち、永く秘境であったため独特の風俗・習慣・方言が残り、多くの民謡・民話が伝えられている。焼畑農耕*の仕組みや生活用具が展示された民俗資料館や、山岳写真家白旗史朗*の記念館などもある。
 温泉は、ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉、43~49度。野趣豊かな露天風呂のある「白根館」と、奈良田湖を一望する町営「女帝の湯 奈良田の里温泉」がある。
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みどころ

温泉はツルツルとした肌触り。白根館は奈良田湖の湖畔にあり、南アルプスの山々の緑や紅葉を目一杯楽しむことができる。また、「奈良田の里」は高台にあり、奈良田湖を見下しながら総檜風呂を楽しむことができる。
 2000~3000mの山々に挟まれた山中にも関わらず、古い歴史を有した土地柄だけに、伝説や民謡も独特のものがあり、それを資料館などで知ることもできるが、やはり、トレッキングや散策を通じ、山の自然や歴史を肌で感じることをお勧めする。
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補足情報

*奈良田湖:1953(昭和32)年に完成した西山ダムによってできた人造湖。かつての奈良田集落は川沿いにあり湖底に沈むこととなったため、現在の斜面地に移転した。
*県道(愛称:南アルプス街道):奈良田集落より早川上流の広河原までの林道はマイカー規制されており、一般車は通行できない。6月下旬から11月上旬のシーズンのみバス便がある。
*孝謙天皇伝説:第46代孝謙天皇が婦人病にかかり、病気平癒を祈願すると夢に甲斐の国湯島の郷の温泉に霊験があると告げられ、奈良田の郷へ遷居することになり、8年間を奈良田に過ごしたとされる伝承で、その時の事績が「奈良田の七不思議」としても伝えられている。この伝説については、「甲斐国志」においても触れられているが、「國史諸記ニ所見ナシト雖ドモ、異本曾我物語ニ大草郷奈良田村、蘆倉村ナドハ工藤荘司ガ知行所トアリ。往時深山ニ人ノ多ク住セシ事以ッテ微スベシ」として、極めて山深い地に古代より多くの人が居住していたことは疑っていない。 
*焼畑農耕:集落背後の山腹斜面の雑木林を一定期間(約15年間)おいて伐りひらき、粟・小豆などの作物を輪作した。山小屋に寝泊まりしながら農作業をした。輪作方式や火入れ作業、害獣除け、信仰行事などにこの地域独特なものがみられる。電源開発や低生産性のため、現在は行われていない。 
*白旗史朗:1933(昭和8)~2019(令和元)年。山梨県出身の山岳写真家で、1977(昭和52)年に日本写真協会賞受賞。南アルプスの写真をライフワークに、ヒマラヤ、富士山など国内外の山岳写真を撮り続け、2000(平成12)年にはスイスのキング・アルバート一世功労勲章を授与されている。
関連リンク 早川町役場振興課(WEBサイト)
参考文献 早川町役場振興課(WEBサイト)
白根館(WEBサイト)
「女帝の湯 奈良田の里」「城籏史朗」記念館パンフレット
早川町観光協会パンフレット及びHP
「甲斐国志」国立国会図書館デジタルコンテンツ(WEBサイト)

2024年07月現在

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