戦場ヶ原・小田代原せんじょうがはら・おだしろがはら

戦場ヶ原は中禅寺湖の北、男体山の西に広がる平均標高1,400mの湿原状の東京ドーム85個分、4km2の規模を誇る高原で、日光国立公園に位置する。また、湯ノ湖、湯川、戦場ヶ原、小田代原のうちの約2.6km2が「奥日光の湿原」としてラムサール条約の登録湿地に登録されている。
 大昔の男体山噴火の折り、その噴出物が竜頭ノ滝のところで湯川をせき止めて深さが100mもある赤沼湖が形成された。現在も戦場ヶ原南東部の赤沼などに湖の名をとどめているが、その後周辺の山々から流れ込む土砂の堆積で次第に浅くなり、水面にはミズゴケが繁殖するなどして陸化が進んだ。現在は湿原から草原への過渡期ともいわれ、赤沼・光徳沼・湯川沿岸に見られる湿潤地も年々区域をせばめている。また、戦場ヶ原には高層湿原、中間湿原、低層湿原の全ての湿原がある。
 戦場ヶ原の名は、神代の昔、男体山の神と赤城山の神とが、美しい中禅寺湖をめぐり、大蛇と大ムカデに姿を変えて戦ったという物語「戦場ヶ原神戦譚」から出たといわれ、周辺にはその話にちなむ地名が多い。
 6月中・下旬はレンゲツツジ・ツルコケモモ・ワタスゲなど、7~8月はアカヌマフウロ・ホザキシモツケ・イブキトラノオなど、9月にはリンドウが咲く。9月下旬からは草紅葉の季節となる。
 小田代原は、戦場ヶ原の約4分の1の広さで、湯川の西部に周囲2kmに渡って広がる。湿原に美しく佇む1本のシラカバの木は、「貴婦人」と呼ばれ、その美しい姿をシャッターに収めようと多くの人が訪れる。また、大雨が降ると一時的にできる「小田代湖」も人々を魅了するひとつ。
 秋には下草が紅葉するが、植物の種類によってその色が異なることからモザイク模様を描き、まるで芸術作品のようなキャンバスを見ることができる。
#

みどころ

戦場ヶ原の西側を湯ノ湖から湯滝となって落ちる湯川が流れ、これにほぼ並行して戦場ヶ原の中央を国道120号が走っている。
 戦場ヶ原独特の枯木立風景が一望に収められるのは三本松周辺、国道の西側になる。草原と枯木のコントラストがおもしろく、付近一帯には湿原・草原特有の植物も咲き乱れ、植物研究やハイキングには絶好の場所である。
 戦場ヶ原一帯は、湿潤植物と高山植物の宝庫といわれるほど多種の植物が繁殖する。6月上旬のズミの開花を皮切りに花のパレードが始まる。9月下旬からは草紅葉の季節となり、草原は黄金色から朱色に染め抜かれる。やがて冬が訪れると白一色の荒涼たる趣に変わる。
 また、ここからは男体山をはじめ、大真名子山・小真名子山・太郎山・三岳・温泉ヶ岳・白根山などを眺められる。(溝尾 良隆)

あわせて行きたい