吾妻連峰あづまれんぽう

福島市の西部から山形県境に広がる山塊で、最高峰2,035mの西吾妻山(にしあづまやま)をもつ西吾妻と、東大巓などの中吾妻、いまだに噴煙をあげる一切経山(いつさいきようざん)を含む東吾妻に大別され、火山群としても東吾妻火山、中吾妻火山、西吾妻火山の3つにくくることができ、東西20km、南北12kmの200km2を超える広大な面積の山域を有する。
 連峰の生成は約150万年前、東吾妻火山の東部で初期の山体形成から始まり、50~40万年前には東吾妻火山の東吾妻山が形作られた。約35万年前には中吾妻火山の東大巓や中吾妻山が形成され、さらに西吾妻火山の西大巓の山頂ができあがり、この頃までに中吾妻、西吾妻の両火山の活動は終息に向かった。一方、東吾妻火山の活動は続き、約30万年前に一切経山が誕生し、その後、浄土平*を中心として東に開口する山体崩壊が起こり、約5千年前には吾妻小富士*が形成された。なお、一切経山は1893(明治26)年に爆発し、そののちの休止期を経て1950(昭和25)年以降噴煙を上げている。
 西吾妻山の中腹や稜線上には池塘、高層湿原が広がり、初夏には湿性植物の花々、秋には草紅葉を見ることができる。連峰の東部には観光道路、磐梯吾妻スカイラインが通じ、山上に散在する湿原や小沼は多くの登山コース*で結ばれている。連峰の山懐、山麓には多くの温泉*が湧出している。
 植生は豊富で、標高1,500mあたりを境としてブナなどの広葉樹林帯と、シラビソ・コメツガの針葉樹林帯に分かれ、ガンコウラン・コケモモや、吾妻山以北に特有のヒナザクラなどが見られる。とくにヤエハクサンシャクナゲは名高い。
 火山活動期の山もあるので登山の際は、火山情報などのチェックが必要だ。
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みどころ

深田久弥は『日本百名山』のなかで「この厖大な山群には、渓谷あり、高原あり、湖沼あり、森林あり、しかも山麓をめぐってあちこちに温泉が湧いている。包含するところの景勝は甚だ豊富であるが、それを極めつくすのは容易でない」とこの連峰の懐の深さを記しており、このため吾妻連峰の楽しみ方も多様で、初心者でも浄土平、吾妻小富士などをはじめ、1,800m~2,000m級のダイナミックな山岳景観や高原植物を楽しむことができる。
 吾妻連峰の山容は大きいので福島市、米沢市側からもよく見える。このため、古くから里人からの信仰を集め、畏怖されていたという。江戸後期の地誌『信達一統志』でも「東屋嶽」として紹介され「東屋嶽神社東屋國神社東屋沼神社三柱の神しづまります」とし、「土人吾妻山と唱へり南北の峯を北家形南家形と云」と記している。また、「此山は總て硫黄山にて土中燒あかり烟絶えず、男女情混して互に心を焦相思ば胸の烟立と云此山常に烟立登りて絶されば思山と云」とも記し、火山の火や噴煙を恋愛の思いにも譬えたということから古歌も多い。平安末期から鎌倉初期にかけての僧侶歌人だった藤原顕昭の「年を経てしげるなげきをこりもせてなと深からん物思山」などがある。
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補足情報

* 浄土平:磐梯吾妻スカイラインの中間地点、標高1,580m。吾妻小富士、一切経山、東吾妻山へのトレッキングの出発点。
* 吾妻小富士:標高1,707m。浄土平から登山道を10分ほど登ると火口を見渡すことができる。火口は直径約500m。火口壁を1時間ほどで1周するお鉢巡りができる登山道が整備されている。浄土平や福島盆地などの展望ができる。
* 登山コース:山域が広大なので、初心者から上級者まで多様な登山コースを選択できる。西吾妻の最高峰の西吾妻山には白布温泉の天元台ロープウェイやリフトを利用すれば、初心者でも稜線上の高層湿原でお花畑を楽しみながら山頂までの登山を楽しめる。また、東吾妻では、磐梯吾妻スカイラインが通じている浄土平から、一切経山、東吾妻山への登山コースも整備されている。山小屋への宿泊が必要となるが縦走も可能だ。
* 温泉:福島側には野地・鷲倉・幕川・土湯・高湯・ぬる湯・信夫などの温泉、会津側には横向など。また、山形県側にも姥湯、滑川などがある。
関連リンク 浄土平ビジターセンター(WEBサイト)
関連図書 『日本百名山』深田久弥 新潮社
参考文献 浄土平ビジターセンター(WEBサイト)
『福島県の山』山と渓谷社
火山学者に聞いてみよう(日本火山学会)(WEBサイト)
『福島の進路2017年8月号 「恋の山 吾妻山」』村川伴彦(とうほく総合経済研究所)(WEBサイト)

2023年07月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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