白神山地のブナ原生林しらかみさんちのぶなげんせいりん

白神山地は、秋田県北西部と青森県南西部の標高約800~1,250mの山岳地帯、1,300㎢に及ぶ広大な山地の総称で、この地域には人為の影響をほとんど受けていないブナ林が分布している。多種多様な動植物が生息・自生するなど貴重な生態系が保たれており、1,300㎢の山地のうち約170㎢が1993(平成5)年12月に世界遺産(自然遺産)に登録*された。
 白神山地の核心部に位置する世界遺産地域では、古くから地元住民による伝統的な山菜取り等が行われてきたが、急峻な地形のために森林伐採はほとんど行われていない。そのため、ほとんど手つかずの状態で、特に原生的なブナ林がまとまって残されてきた。わが国独自のマタギ*文化が根付いていたためでもある。
 世界遺産登録地域は核心地域と緩衝地域からなり、このうち青森県側の核心地域では既存の歩道と27の指定ルートが設けられ、入山が可能。ただし、指定ルートの利用の際はルート管理者である森林管理署長等への入山手続き等が必要である。
#

みどころ

白神山地には、世界的にもまれな多雪環境を反映して、日本固有種のブナ(Fagus crenata)を主とする森林生態系が世界最大級の広がりをもっている。原生的で多様な植物群や豊富な動物が共存し、つながりあっている。特にブナは生産性の高い木で、その実は山で生きる動物たちのエサとなる。
 絶滅寸前といわれるクマゲラやイヌワシ、クマタカなどの貴重な生息地となっているのも広いエリアと人手がほとんど加わっていないためであり、こうした原生的な自然が残っているのは貴重である。
 白神山地の世界自然遺産地域の自然の醍醐味を手軽に味わえる西目屋村の暗門の滝周辺は、遊歩道が整備されているのでブナの木漏れ日に包まれながら探訪できる。ブナ原生林を俯瞰するのであれば青森県側では標高1,232mの白神岳山頂から、秋田県側では標高1,086mの二ッ森山頂からなどが世界遺産のエリアを一望でき、その緑の大海原に感動する。白神山地の概要を学びその自然を体験するには青森県西目屋村の白神山地ビジターセンターか、秋田県藤里町の環境省白神山地世界遺産センター(藤里館)に立ち寄り情報を得ることをお勧めする。
#

補足情報

*世界遺産登録:1987(昭和62)年、秋田県側から青森県側への「青秋林道」の建設着工に対し、林道反対の運動がおこり、ブナ林の貴重さが認識され調査の結果、環境省による世界遺産の申請に結びついた。
*マタギ:クマ、カモシカなど大形山獣の集団猟を業としてきた東北山村の狩人(かりゅうど)の称。おおむね山奥で独自の集落生活を営み、農耕、山稼ぎにも従事したが、冬から春にかけては深山に分け入り、仮泊の生活を続けながら狩猟に専念してきた。山の神への儀礼、狩猟期のきびしい禁忌、獲物の分配法等に特異な古俗を残しているが、現在では数少なくなっている。
関連リンク 環境省(WEBサイト)
参考文献 環境省(WEBサイト)
白神山地ビジターセンター(WEBサイト)
環境省(WEBサイト)
青森県(WEBサイト)

2023年10月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

あわせて行きたい