仙巌園せんがんえん

1658(万治元)年に、島津家19代光久(みつひさ)によって築かれた島津家の別邸。目の前に広がる錦江湾(きんこうわん)を池、桜島を築山に見立てた壮大な大名庭園で、敷地面積は約1万5千坪。島津家歴代に愛され、篤姫や西郷隆盛も訪れている。
 28代斉彬がガス灯の実験に用いたと伝わる鶴灯籠や、琉球国王から贈られた望嶽楼(ぼうがくろう)、日本の孟宗竹(もうそうちく)発祥の地である江南竹林など、島津家の歴史を感じられるスポットが点在。千尋巌(せんじんがん)という文字が刻まれた巨岩など珍しいものも多い。これは、27代斉興(なりおき)が延べ3,900人に3カ月かけて刻ませたもので、3文字で11m。庭園の自然石に字を彫る中国文化の影響を受けている。
 仙巌園入口近くに位置する反射炉跡は、斉彬がオランダの書物を参考に築かせたもの。鉄を溶かして鋳型に流し、大砲の砲身を造るための施設で、現在は、1857(安政4)年に完成した基礎部分が残る。斉彬は、日本初の近代的な工場地帯「集成館」を建設し、大砲鋳造や紡績、造船、薩摩切子の開発など様々な事業を推し進めた。このことから、仙巌園一帯は、2015(平成25)年に「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産*に登録された。斉彬が尽力した薩摩の近代化ストーリーについては、反射炉跡に隣接する「鹿児島 世界文化遺産オリエンテーションセンター」で学ぶことができる。
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みどころ

園内各所から、錦江湾と桜島の雄大な景色が楽しめる。海に向かって開けた壮大な庭園に立つと、中国や琉球を通して世界を見据えていた斉彬の思いを感じることができる。現存する御殿は、1884(明治17)年に29代忠義によって改築されたもの。国内外の要人をもてなす迎賓館としての役割も果たした。現在は、古写真や調度品が展示されており、当時の暮らしぶりを体感できる。
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補足情報

*世界遺産:世界遺産条約(1972(昭和47)年)に基づき、人類共通の宝物として未来の世代に引き継いでいくべき文化財や遺跡、自然環境として、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会により登録された有形の資産。文化遺産・自然遺産・複合遺産の3種がある。
*四季折々の花が咲き誇り、武家の伝統を今に伝える様々な催しも行われている。郷土料理を味わえるレストランやカフェ、鹿児島を代表するアイテムが取りそろうショップも充実。仙巌園名物の「両棒餅(ぢゃんぼもち)」も味わえる。大河ドラマ「篤姫」「西郷どん」のロケ地にもなっている。
関連リンク 仙巌園(WEBサイト)
参考文献 仙巌園(WEBサイト)
『鹿児島県の歴史散歩』山川出版社、2005年

2020年09月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。