相国寺しょうこくじ

地下鉄今出川駅から徒歩約10分、同志社大学の北側に広大な寺域を構える、臨済宗相国寺派の大本山。正式名称は萬年山相國承天禅寺。室町に花の御所を造営した足利義満が、その隣接地に約10年の歳月を費やして1392(明徳3)年に完成した。 「相国」とは唐名で大臣を意味し、当時、左大臣だった義満にちなんだもの。義満は禅の師春屋妙葩(しゅんおくみょうは)*に開山を要請したが固辞。妙葩の師、夢窓疎石*を開山とし、妙葩自らは二世住職となるが伽藍完成を見ずに没する。
 京都五山*では第2位に列するが、室町期の相国寺は実質的に禅院の最高峰に位置し、禅院を統制する僧録司もこの寺に置かれた。のちには多くの学僧を輩出して五山文学*の中心ともなった。伽藍は竣工2年後に失火で炎上。すぐ再建にかかり、造立された七重塔は高さ109mに及んだといわれる。しかし応仁・文明の乱をはじめたびたび焼失、豊臣家や徳川家による復興もあったが、法堂以外の伽藍は江戸後期以後の再建である。明治時代以降、多くの塔頭が廃され、寺域も5分の1に縮小した。現在、塔頭は13。金閣寺、銀閣寺はこの寺の山外(境内外)塔頭である。
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みどころ

京都御苑の今出川御門から北へ約200mにある総門をくぐると、左手の勅使門から松林の中の参道が三門跡・仏殿跡の礎石を経て一直線に法堂*へと続く。その北に方丈*、方丈の東に白壁と柱・梁が美しい庫裏、開山堂*、西に浴室*などの諸堂が立つ。法堂・方丈・開山堂、浴室の内部の特別拝観は春、秋の期間限定。開山堂前には伝説の宗旦(そうたん)狐*を祀る宗旦稲荷が鎮まる。境内奥には伊藤若冲の襖絵など多くの寺宝を収蔵する承天閣(じょうてんかく)美術館*がある。塔頭*は松林の両側や伽藍西側に立ち並んでおり、通常非公開だが、特別公開もある。
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補足情報

*春屋妙葩:1311~1388年。室町時代初期の禅僧。夢窓疎石の高弟であり、甥でもある。天龍寺、南禅寺、東福寺、相国寺の住持を歴任し、初代の僧録に任命された。
*夢窓疎石:1275~1351年。南北朝時代の禅僧。北条貞時、後醍醐天皇、足利尊氏などの帰依を得て、臨済宗の地位を高めた。造園にすぐれ西芳寺・天龍寺・鎌倉瑞泉寺・山梨恵林寺などに名園を残す。
*京都五山:室町幕府が臨済宗寺院を統制するために設けた制度で、最高の寺格を与えられた五山、その下に十刹・諸山が列する。しばしば選定や順位に変更があり、最終的に南禅寺を五山の上に置き、天龍寺・相国寺・建仁寺・東福寺・万寿寺の順となった。
*五山文学:鎌倉末期から室町時代にかけて五山の禅僧の間で行われた漢文学。日記・語録・漢詩・論説・随筆など、多方面にわたるすぐれた作品が残る。
*法堂:重文。無畏堂と称し、現在仏殿を兼ねる。1605(慶長10)年に豊臣秀頼が再建。現存する日本最古の法堂で、桃山時代の禅宗様建築の代表作といわれる。重層、入母屋造、本瓦葺、正面7間、側面6間、内部は瓦敷。中央須弥壇に本尊釈迦如来、脇侍に阿難・迦葉尊者像を安置する。天井いっぱいに描かれた狩野光信筆と伝える彩色鮮やかな蟠龍図(ばんりゅうず)は、下で手を打つと共鳴音がすることから鳴き龍と呼ばれる。
*方丈:単層、入母屋造、桟瓦葺、1807(文化4)年の再建。方丈の南、北に庭園があり、北側の庭園は樹木を植えて谷間の趣を見せている。方丈には若冲の襖絵もある。
*開山堂:1807(文化4)年の再建。夢窓国師像を安置し、襖・杉戸絵は円山応挙筆といわれる。前庭は江戸時代後期に改作された禅院式枯山水庭園で、築山と流れを組み合わせた山水と、白砂に石を配した枯山水平庭からなっている。
*浴室:宣明(せんみょう)と呼ばれる。1596(慶長元)年に再建、2002(平成14)年に復原修復された蒸し風呂。
*宗旦狐:塔頭の慈照院で茶会が開かれた時、時々千宗旦に化けてみごとな手前を見せたという。正体が露見したのちは雲水に混じって修行し、善行を積んだとも。
*承天閣美術館:若冲と相国寺の関係は深く、寄進した数々の絵が相国寺に伝わった。有名な動植綵絵は明治時代に寺の窮地を救うため皇室に献上されたが、今は精巧な複製が収蔵されている。若冲が描いた金閣寺の大書院障壁画の一部などもここにある。高僧の墨蹟や茶道具類も多い。
*塔頭:足利義政の墓所で、宗旦好みの茶室のある慈照院、京都十三仏霊場めぐり第4番の普賢菩薩を祀る大光明寺、名高い「鶯宿梅」とユニークな襖絵のある林光院など。瑞春院は、ここで子僧として過ごした水上勉が書いた小説「雁の寺」のモデルとなったことで知られる。
関連リンク 相国寺(WEBサイト)
参考文献 相国寺(WEBサイト)
「京都府の歴史散歩 上」山川出版社
「相国寺承天閣美術館」2023年12月23日 朝日新聞夕刊

2025年05月現在

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