日本平にほんだいら

静岡市の中南部、駿河湾に面する丘陵が標高 307mの有度山、その山頂付近が日本平公園となっている。公園は、富士山や清水港、三保松原の眺望で知られる。公園内の山頂付近にレストランやお土産ショップと展望施設の「日本平夢テラス」*1が建ち、山頂直下の平原ゾーンには大芝生広場、富士見の散策ガーデン、茶畑*2などが広がり、平原ゾーンの北側には日本平ホテルがある。
 山頂付近からは、北東方向に清水港を挟んで富士山を望み、東は伊豆半島、西は焼津・御前崎方面、南は駿河湾、北は南アルプス南部まで見渡すことができる。                                                             
 公園周辺には、西の中腹、山麓に日本平動物園*3、有度山総合公園などが点在し、北麓は広い緩るやかな傾斜で山裾が長く、舞台芸術公園*4や静岡県立美術館*5があり、東麓には清水日本平運動公園がある。駿河湾に面する南側は海食の急崖を隔て、ロープウェイで結ばれている久能山があり、そこには徳川家康を祀る国宝・久能山東照宮が鎮座する。また、南麓は石垣いちごの産地となっている。
 アクセスは、西麓の静岡市側から通じる静岡日本パークウェイ・東麓の清水港・三保松原側から通じる清水日本平パークウェイ、静岡駅からはバス便がある。山麓から山頂に向け6本のハイキングコースが整備されている。
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みどころ

明治から昭和にわたり活躍した評論家で歴史家でもある徳富蘇峰が1926(大正15)年日本平に登り、「此の山上の平地が、幾町歩あるやを詳にせざるも、餘程の面積がある…中略…實に天下第一と申しても、差支あるまいと思ふ。何たる仕合であろう。富士は全身を露はしてゐる。我等は遠州の御前崎から、伊豆の石廊崎まで、殆ど残る隈なく展望をするを得た」とこの公園の眺望を賞賛している。
 1950(昭和 25)年には、毎日新聞社主催の「新日本観光地百選」の人気投票で、10部門のひとつ平原高原部門で日本平が一位となり、富士山の展望地として有名になった。安藤広重の東海道五十三次「江尻 三保遠望」や狩野探幽の「富士山図」などは、日本平周辺からの構図といわれている。
 この眺望を活かし公園の整備が進み、静岡の郷土景観である茶畑・果樹園、それに緑豊かな樹林地が訪れる者に開放感を与えてくれる。公園の北側には、「風景美術館」をコンセプトとした高級感あふれる日本平ホテルがあり、山頂近くの日本平夢テラスでは、カフェで楽しみながら静岡市街や清水港の素晴らしい夜景*6が望める。公園のある有度山には、芸術舞台公園や日本平動物園など多種多様な施設があり、ハイキングコースも充実し、のんびりと一日を過ごすことができる。
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補足情報

*1 日本平夢テラス:山頂近くに建つ。建築家隈研吾の設計で静岡県産の木材を使い、富士山を望む自然景観と調和した設計になっている。展望台の役割を果たすとともに、日本平の歴史や文化についての展示エリアや、カフェラウンジなどの施設が設けられている。
*2 茶畑:茶摘み体験ができるほか、山頂直下の茶畑のなかにあるデッキ「全景の茶の間」で、静岡茶2種類と日本平ホテル特製茶菓子を素晴らしい眺望とともに楽しむことができる(事前予約が必要)。                                                                     *3 日本平動物園:有度山の西麓、日本平公園に向かう日本平パークウェイ入口付近にある。面積は約13万m2で約160種700点の動物を飼育している。1969(昭和44)年に市制施行80周年を記念して開園された。動物園種の保存事業に力を入れており、とくににオオアリクイについては国内随一の繁殖成績をおさめている。展示施設としては、動物と実際に触れあったりエサやり体験が親しめる「ふれあい動物園」や「猛獣館299」、「フライングメガドーム」、「爬虫類館」、「レッサーパンダ館」などがある。また、園内の南西部にある丘の上の「ふしぎな森の城」や展望広場との間は、片道3分のオートチェアやローラースライダーで結ばれている。展望広場からは静岡市街の景色が開ける(2023年8月時点でオートチェア・ローラースライダー・展望広場の利用ができないため事前確認が必要)。                                                                                 *4 舞台芸術公園:静岡県の文化政策の一環で地方から創造し発信しようと、1995(平成7)年に発足した静岡県舞台芸術センターの活動拠点。約21万m2の広大な園内には、野外劇場「有度」、屋内ホール「楕円堂」、稽古場や研修交流宿泊棟、本部棟等が点在している。園内を散策でき、随時公演やイベントが行われている。                                                                         *5 静岡県立美術館:1986(昭和61)年4月開館。17世紀以降の東西の山水・風景画、静岡県ゆかりの作家・作品、ロダンをはじめとする近代彫刻、富士山の絵画などを中心に収集収蔵し、本館、新館のロダン館において常設展示や企画展を開催している。
*6 夜景:2016年に「日本夜景遺産」に認定された夜景。日本平から望む夜景は、光と闇の黄金比とされる「45:55」であり、大変バランスの良い景色である。

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