赤石岳あかいしだけ

赤石山脈すなわち南アルプスの南部にあり、赤石山脈の盟主で巨体をすえる。浸食が著しく、険しい尾根を四方に張り重量感があり、その存在感から赤石山脈の名にふさわしい。山名はこの地域の岩石に含まれるラジオラリヤ板岩*が赤紫色からである。山頂は広く、カール状の地形が散見される。
 昔の信仰登山のなごりをとどめる石や鉄製の剣が残っている。明治時代には地質学者エドモンド・ナウマンやウエストン、河野齢蔵、小島烏水などの著名な学者、登山家がそれぞれ登山している。
 登山コースの代表的なものは、椹島から東尾根を登って登頂、さらに足を延ばして荒川三山を回って椹島へ戻ってくる一周コース。椹島へは静岡駅からバスで畑薙第1ダムまで入り、ダムから林道を歩くか宿泊予約者限定の送迎バスで向かうのが一般的。
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みどころ

荒川三山や聖岳、中盛丸山、兎岳など周辺の山々の個性的な山が多い中、赤石岳は独立した王道を行く横綱の風格がある。深田久弥は「これほど寛容と威厳とを兼ねそなえた頂上はほかになく、あらゆる頂上の中で最も立派である」と称えている。
 山深いにもかかわらず、昔から周辺の地域では注目を集めていた。最奥という神秘性に加え、命名の根拠となった赤色チャート(珪質系推積岩)や赤褐色のラジオラジアチャートが山を赤く彩り、他にはない赤さが人目を引いたからではないかと推測できる。
 明治時代には地質学者エドモンド・ナウマン*やウエストン、河野齢蔵、小島烏水なども、この地域の登山をして山深い困難さと稜線上からの景観に感激したと思われる。
 山頂からの景観は西側の北アルプス、中央アルプスのパノラマが展開し、さらに北には荒川三山の壁と前岳の大崩落地、南の大沢岳、兎岳、聖岳の景観が間近にせまってくる。
 高山植物もタカネシオガマ、ミヤマオダマキ、崩落地植生のタカネビランジなど豊富である。(林 清)
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補足情報

*ラジオラリア板岩:堆積岩。海に沈んだ放散虫というプランクトンの死骸が積もりに積もってやがて石になり、造山活動により地表に現れ露出したもの。赤い色の岩が特徴。
*エドモンド・ナウマン:日本における近代地質学の基礎を築くとともに、日本初の本格的な地質図を作成。またフォッサマグナを発見したことや、ナウマンゾウに名を残す。

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