越前和紙の里えちぜんわしのさと

越前和紙の歴史は古く、およそ1500年前の継体(けいたい)天皇の時代に、岡太(おかもと)川のほとりで女神から製造技術を教えられたという伝説*が残っている。
 奈良時代に宮中御用の教書紙となり、中世以後、「越前奉書紙」と呼ばれて広く世に知られるようになった。戦国時代は「紙座」により、江戸時代には福井藩によって保護された。明治初期には最初の全国紙幣「太政官札」に用いられ、後に大蔵省紙幣寮抄紙局でもこの紙漉き技術が用いられた。その関連で岡太神社から川上御前の分霊が、国立印刷局抄紙部(しょうしぶ)に奉祀され、岡太神社は名実ともに、全国の紙業界の総鎮守となった。1976(昭和51)年に国の伝統的工芸品の指定を受け、後継者の育成が図られている。
 生産地はむかし五箇(ごか)といわれた現在の越前市岡本地区で、50戸あまりが襖紙、美術、印刷、建築用和紙などの生産をしている。コウゾ・ミツマタなどの原料を使い、煮沸・抄造・流し漉き・乾燥など伝統的技法を生かした約15の行程を経て作られる高級紙が特徴だが、なかでも奉書紙の品質は全国一とされている。
 和紙の里には、見学施設として、紙の文化博物館*、卯立の工芸館*、紙すき体験ができるパピルス館*がある。
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みどころ

伝統的工芸品が多い福井県の中でも、ここは和紙の里といわれるように、1500年の昔から「越前五箇」と呼ばれる5つの集落で、越前和紙*を作り続けてきた。
 まず、紙漉きの業を伝えた女神・川上御前を紙祖の神として祀る岡太神社に参拝して、岡太川に沿い歩き、和紙の里通りをのんびりと歩く。紙業者関連の瓦の家並がしっとりとした落ち着いた雰囲気を醸し出し、まさに歴史的風土100選に選ばれたにふさわしい和紙の里である。紙の文化博物館、卯立の工芸館、パピルス館を訪れたでけでも1時間は費やすが、その間にある個々の和紙業者の店を覗いたりするのも楽しい。(溝尾 良隆)
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補足情報

*伝説:岡太川の上流に、ひとりの美しい女性があらわれ「この村里は、谷あいで田畑が少なく、暮らしにくいところです。しかし、水清らかな谷川と、緑深い山やまに恵まれています。紙漉きを生業とすれば、生活もらくになるでしょう。」と、紙の漉き方を教えてくれた。「岡太川の上流に住むもの」と答えた女性を川上御前と崇め、紙祖神として岡太神社に祀った。
*紙の文化博物館:越前和紙の発祥や歴史、紙漉き工程、和紙を取り巻く人々などの営みなどを、パネル・和紙人形を使って展示してある。
*卯立の工芸館:江戸時代中期に建てられた紙漉きの家屋を移築、復元したもの。昔ながらの紙漉き工程を再現。
*パピルス館:バラエティーに富んだ越前和紙製品を揃えている。ここでは紙漉き体験ができる。和紙製品の販売コーナーもある。
*越前和紙:公文書に使われたが、偽紙と見分けるために、時の権力者による印(信長「七宝」、秀吉「桐の紋」、家康「御上天下一」)を捺すことが許された。また美しさと耐久性のある「紙の王様」と称えられた「越前鳥の子紙」は17世紀には海外へ輸出され、レンブラントの版画に使われたともいわれている。
関連リンク 越前和紙の里(WEBサイト)
参考文献 越前和紙の里(WEBサイト)
パンフレット「越前和紙の里」
パンフレット「紙祖神岡太神社 大瀧神社」

2022年06月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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