永平寺えいへいじ

全国に1万5,000の末寺、檀信徒800万人をもつ曹洞宗の大本山で、開祖道元(どうげん)*が坐禅修行の場として志比谷最奥部のこの地を選んで以来、約770年にわたって法燈を伝えてきた古刹である。
 1244(寛元2)年、京都深草に開庵していた道元が、志比庄地頭波多野義重の請に応じて越前に下り、開山したと伝える。当初は傘松峰大仏寺(さんしょうほうだいぶつじ)と称したが、2年後に永平寺と改めた。道元の没後、三世義介(ぎかい)が宋の禅刹にならい七堂伽藍*を整備し、現在の寺の原形を完成させた。
 1372(応安5)年、後円融天皇により“日本曹洞第一道場”の勅額を下賜され、宗威は一般民衆にも浸透した。江戸時代の1615(元和元)年には、徳川幕府から保護を受け、総持寺祖院とならんで大本山の地位を確立している。この間幾度か火災に見舞われたが、その都度再興し、現在に至っている。
 現在も眼蔵会で道元禅師の著書『正法眼蔵*』が講ぜられる。わが国禅修行の第一の道場で、いまなお毎年多くの修行僧が上山してくる。修行僧に課せられる厳しい戒律は僧俗の区分を超越して、社会に大きな影響をおよぼしてきた。
 京福電鉄永平寺駅から参道を5分ほどで龍門前に達する。樹齢500年あまりの老杉に囲まれた寺域は約33万m2、正面奥に唐門*が見え、その左側に祠堂殿(しどうでん)がある。道はさらに奥へつづき山門*に達しているが、一般の参拝者は龍門左手の通用門から山内に入る。建物は山門・仏殿・法堂(はつとう)*が一直線に並び仏殿の東には大庫院(だいくいん)、西に僧堂*が相対する。山門の東回廊のはしに浴室、西端に東司(とうす)*があり、すべて回廊で連絡されて、整然とした七堂伽藍*を形作っている。そのほか道元廟の承陽殿・衆寮・傘松閣(さんしょうかく)・瑞雲閣・大光明蔵(だいこうみょうぞう)など70余棟が甍を競う。
 山門が1749(寛延2)年の建築であるほかは、大部分が近代のものである。聖宝閣に道元自筆と伝える国宝の普勧坐禅儀(ふかんざぜんぎ)*ほか数点の重要文化財が展示されている。
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みどころ

山内では見学を参拝、宿泊を参篭(さんろう)と称し、すべて修行の一環として扱う。見学できる場所は傘松閣・山門・法堂・庫院・僧堂仏殿・浴室・東司・聖宝閣と限られており、修業僧の生活区域へは入れない。酒気を帯びての入山禁止や廊下は静かに左側を歩行するなどの規則がある。
 京都の寺院にみられる庭園や紅葉などのすばらしさを期待すると、永平寺には意外な感じを抱くだろう。永平寺は700年以上も道元禅師の意志を継承する坐禅修行の道場で、そうした張り詰めた雰囲気がひしひしと伝わってくる寺である。約1時間で寺内を回ることはできるが、永平寺では坐禅、写経、参禅など予約なしで修行できる。
 その他に修行道場の雰囲気に身を入れるには参籠がおすすめ。参籠は1泊2日2食と、3泊4日8食のコースがある。食事は、修行僧の食事とは違って旅館の食事と遜色ないから心配することはない。
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補足情報

*道元:1200~1253年。13歳で比叡山に入り、次いで栄西に従って禅を学ぶ。1223(貞応2)年、宋に渡り、天童山の長翁如浄の教化を受け、帰国後京都深草で曹洞宗の布教に努めた。その後越前に移るが、終始公武の権威を嫌い、鎌倉北条氏の寄進や、皇室からの下賜品を断ったという。わが国曹洞宗の開祖で、承陽大師の称号を贈られている。
*七堂伽藍:寺院の規模の典型とされる堂宇。
*正法眼蔵:95巻から成る。1231(寛喜3)年から22年間にわたり記したもので、禅の本質と伝統・規範などを論じたもの。
*唐門(からもん):龍門からつづく道の奥、ゆるやかな石段の上に立つ。1839(天保10)年の唐様門で、両扉につけられた一対の大きな菊の紋章が目をひく。ふだんは閉ざされている。
*山門:1749(寛延2)年再建の、唐様総欅造の重層楼門である。間口約16m、奥行約9mで、現存する伽藍のうちでは最古のものである。楼上は羅漢堂になっており、正面に「日本曹洞第一道場」の勅額がかかっている。
*法堂:禅宗では説法の道場のことである。
*僧堂:一般に坐禅堂または雲堂と呼ばれ、修行僧の修養の場である。内部構造は、中国宋時代の坐禅堂を模したもので、内堂と外堂に分かれ、内堂中央に文殊菩薩を安置している。まわりに畳敷きの座床が設けられ、1人1畳の範囲を守って坐禅・食事などを行う。浴室・東司と並んで三黙道場の一つとされ、談話・読書は禁じられている。
*東司:禅宗寺院において、便所のこと。
*普勧坐禅儀:坐禅の奥義を説いた曹洞宗の根本聖典で縦28.8cm、全長3m18cmの巻物になっている。1227(安貞元)年成立。道元著述の最初のもので、端正な文字で74行の文章をつづってある。
*年中行事:授戒会(じゅかいえ)*(4月23~29日)・眼蔵会(げんぞうえ)・開山御忌法会*(9月23~29日)。
*授戒会:一般の男女を問わず信徒を中心に一週間の修行をし、戒法を授かる会。
*開山御忌法会:道元の命日9月29日を迎えるにあたっての7日間の法要。
*五観の偈:食事訓ともいい、食事の前に必ず唱えるいましめ。心構え・反省・作法・行動・務めなど五カ条からなる。
関連リンク 大本山永平寺(WEBサイト)
参考文献 大本山永平寺(WEBサイト)

2022年06月現在

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