水郷のアヤメすいごうのあやめ

潮来大橋の東、潮来市内を流れる前川が常陸利根川に注ぐ付近の河畔にある。河原に群生した原種を改良したアヤメ、ハナショウブ*を中心にカキツバタなども含め1.3万m2に約500種100万株が咲き乱れる。かつては潮来市内には3か所のあやめ園があったが、2013(平成25)年に市営水郷潮来あやめ園としてこの地に集約し整備充実させた。
 江戸時代にはこの周辺は水路が張り廻らされ、江戸への舟運の拠点として栄えていた。当時、江戸で流行った俗謡潮来節などに「潮来出島の真菰の中に、あやめ咲くとはしほらしや」*と謡われるほど、すでにアヤメやハナショウブで知られていた。このような歴史のある潮来のアヤメを継承していくとともに観光振興にも役立たたせようと、行政、地元有志によって1956(昭和31)年、前身となる「前川あやめ園」が開設された。
 毎年5月下旬から6月にかけてあやめ祭りが開催される。ろ漕ぎによるサッパ舟での前川十二橋めぐり*や白無垢に身を包んだ花嫁さんを乗せる嫁入り舟*も水郷らしさを感じさせてくれる。
#

みどころ

前川沿いに細長く、レイアウトされており、水郷の風景と水生植物のアヤメ、ハナショウブが見事にシンクロする景観である。夜は照明を受けてひときわ美くしい。アヤメや花菖蒲の紫をはじめ色とりどりの花を川風のそよぎを感じながら、観賞できるのは心地よい。
 前川十二橋めぐりや嫁入り舟など、水郷情緒を満喫できる。(志賀 典人)
#

補足情報

*アヤメ、ハナショウブ:ショウブはサトイモ科で、花は小さく観賞の対象にはならない。アヤメ、ハナショウブ、カキツバタは同じ「アヤメ科」である。開花期は5月上旬ころから、アヤメ、カキツバタ、ハナショウブの順に咲く。アヤメは花弁の基部に編目模様があり、葉は細く、葉脈がない。カキツバタの花弁基部は黄白色で葉は広く、ハナショウブは花弁基部は黄色で葉の主脈が太い。なお、アヤメは、古来、「菖蒲」と表記されたため、ハナショウブもアヤメと混用あるいは総称される場合があった。
*潮来出島の真菰の中に、あやめ咲くとはしほらしや:「潮来あやめの碑」には徳川光圀が潮来巡察の折、水生植物のマコモの中に咲くアヤメの姿を詠んだ歌として掲げられている。
*前川十二橋めぐり:水路の多いこの地域では人家と人家を行き来するための小さな橋が架けられた。その橋をサッパ舟と呼ばれる小舟でめぐるのが、十二橋めぐり。「前川十二橋めぐり」と「加藤洲十二橋めぐり」の2コースがある。ろ舟(サッパ舟)の他、エンジン付きの遊覧船で十二橋をめぐるコースも。「前川十二橋めぐり」は水郷潮来あやめ園に沿って流れる川を運航。「加藤洲十二橋めぐり」は常陸利根川(北利根川)を横断し、加藤洲水門をくぐり細い水路を運航。
*嫁入り舟:1960(昭和35)年頃までは嫁入りする際の花嫁や嫁入り道具等を運搬するときにも水路が利用されサッパ舟が使われていた。これが「嫁入り舟」のはじまりだとされる。当時流行した歌謡曲「潮来花嫁さん」で全国的に有名にもなった。しかし、生活形態や交通手段が変化し、サッパ舟を使った「嫁入り舟」は見かけなくなった。その後、1985(昭和60)年「つくば国際科学技術博覧会」の際にイベントとして復活し、現在もあやめまつりのイベントとして継続されている。
関連リンク 潮来市(WEBサイト)
参考文献 潮来市(WEBサイト)
水郷潮来観光協会(WEBサイト)
観光いばらき(一般社団法人茨城県観光物産協会)(WEBサイト)
潮来あやめ園由来の碑

2020年12月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

あわせて行きたい