田代山湿原たしろやましつげん

田代山は福島県南部、栃木県境にある標高1,926mの山で、台地状の頂上部に湿原が広がる。田代山は数百万年前に生成された火砕流台地*といわれている。台地面は南西から北東に向け長い楕円形をしており、その直径は長い方が約800m、短い方が約350mである。
 湿原の標高は約1,920~1,970mであり、北東方向に緩く傾いた傾斜湿原となっている。このため、泥炭層は比較的薄く、50~70cm程度で、最深部でも2m程度の中間湿原から高層湿原*が展開している。尾瀬や駒止の湿原に比べ面積は約20万m2 と小さいが、起伏が少なく仕切られていない単一の緩傾斜面であることが特徴的である。また、傾斜湿原に特徴的な等高線に平行して少し高まった凸地(bank)と、低くなった細長い凹地(hollow)という微地形が明瞭に見ることができ、これらが植生*にも影響を与えている。周囲は亜高山帯の常緑針葉樹オオシラビソの林に囲まれている。
 登山口は湯の花温泉から林道で詰めた猿倉登山口、檜枝岐から馬坂峠まで車で入り、帝釈山を経て田代山を目指す馬坂峠登山口でいずれも日帰りが可能。
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みどころ

江戸後期に編纂された『新編会津風土記』では、田代山は「木賊村ノ東南ニアリ登ルヿ(コト)ニ里計山中ニ廣キ原アリ其中ニ田畝ノ遺形アリト云」と記されており、その湿原はすでに知られており、江戸後期以前には、一部で耕作も試された可能性を示唆している。
 頂上部の傾斜湿原という特徴的な立地で、景観に広がりがあり、開放感があり、周囲の山々の眺望との取り合わせも良い。草花のみごろは6~8月。紅葉期も良い。
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補足情報

*火砕流台地:火砕流のもとになったのは南20km の栃木県北部の火山ではないかと、されている。
*中間湿原から高層湿原:高山などで貧栄養の地下水、降水に満たされる湿原は、枯れた植物の分解が遅く、泥炭層が生成されやすい。この層が厚い湿原を高層湿原という。また、傾斜地や地下水の供給が多く泥炭層が薄い湿原を低層湿原という。泥炭層が伴なわない場合は、沼沢となる。 地形、気候、地質など条件により異なるものの一般的には沼沢から低層、中間、高層と湿原は遷移するとされるが、環境変化により乾燥化し湿原が各段階で消失することも多い。
*植生:湿原の周辺部には、ニッコウキスゲ、チングルマ、キンコウカ、コバイケソウなど、湿原高山性植物、湿原内部の凸部にはイボミズゴケやチャミズゴケ、ワタミズゴケが群落をつくり、ワタスゲも群生し、凹部にはホロムイスゲ、ミカヅキグサなどが見られる。
関連リンク 南会津町(WEBサイト)
参考文献 南会津町(WEBサイト)
『ふくしま自然散歩-会津若松と会津山地-』蜂谷 剛 樫村 利道 歴史春秋社
『福島県田代山湿原について』植生情報第6号(2002年3月)樫村利道
南会津町観光物産協会 舘岩観光センター(WEBサイト)
『新編会津風土記 第25-34』会津藩地誌局 万翠堂 国立国会図書館デジタルコレクション

2023年08月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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