駒止湿原こまどしつげん

会津鉄道会津田島駅から国道289号線で西へ約10kmの針生地区から町道に入り、さらに北西に7kmほど進むと、福島県大沼郡と南会津郡の郡境が接する分水嶺地域に広がっている。標高1,135mの駒止峠の北側一帯の沢には寒地性の低層・中間・高層の3段階の湿原群*が発達し、学術的に貴重なものとされている。国の天然記念物指定保護区域で面積はおよそ148万m2。主な湿原は大谷地(おおやち・面積13.3万m2)・白樺谷地(しらかばやち・同5.7万m2)・水無谷地(みずなしやち・同8.3万m2)の3つに分かれている。周辺はブナ林地帯であり、湿原はおよそ700万年前に形成された火砕流台地群*が長年の浸食により浅い谷を生み、そこに泥炭層が堆積することで成立した。
 大谷地は低層から高層湿原への遷移が分かりやすく、これに即して、ヨシ類、コケ類をはじめキンコウカ・ミツバオウレンなど高山性湿原植物やニッコウキスゲ・リュウキンカなどが生育し植物の種類も多い。白樺谷地は谷頭の低凹地に発達した高層湿原で、泥炭層も3~3.5mと厚く、ミズゴケが密生し、ワタスゲ・ヌマガヤ・ミズギク・ツルコケモモ・ハイイヌツゲが多い。水無谷地はブナの原生林に囲まれ、イボミズゴケが多く、ヒメミズゴケやワタスゲなども繁茂し、とくに原始性があるとされている。
 湿原全体に木道が整備されている。湿原へのアクセスは、南側の南会津町と北側の昭和村からの林道があるが、災害などの影響を受けやすいので、道路事情については入山前に必ず確認する必要がある。
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みどころ

大谷地、白樺谷地、水無谷地3つの湿原を結ぶ木道と道路は約2km。駒止湿原は標高も1,000mを超え、低層から高層へ3種類の湿原であることから幅広い種類の植物を見ることができる。とくに4月下旬のミズバショウ、初夏のニッコウキスゲ、ワタスゲが湿原一面を彩り、美しい。また、紅葉シーズン期も清々しい冷気とともに錦秋を楽しめる。
 道路事情やクマの出没もあるので、地元の案内ガイドを依頼するのもお勧め。
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補足情報

*低層・中間・高層の3段階の湿原群:高山などで貧栄養の地下水、降水に満たされる湿原は、枯れた植物の分解が遅く、泥炭層が生成されやすい。この層が厚い湿原を高層湿原という。また、傾斜地や地下水の供給が多く泥炭層が薄い湿原を低層湿原という。泥炭層が伴なわない場合は、沼沢となる。 地形、気候、地質など条件により異なるものの一般的には沼沢から低層、中間、高層と湿原は遷移するとされるが、環境変化により乾燥化し湿原が各段階で消失することも多い。
*火砕流台地群:駒止の火砕流台地は溶結した単一の流紋岩質からなり、火砕流のもととなったのは南西約50kmの栃木県奥鬼怒カルデラではないかと、されている。

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