オホーツク海沿岸の流氷おほーつくかいえんがんのりゅうひょう

流氷はオホーツク海沿岸の海一面を覆いつくす氷の塊で、紋別、網走、知床でみられる。海水が凍ってできる氷は「海氷(かいひょう)」といい、海氷として動く氷を「流氷」と呼ぶ。海水は真水に比べ凍りにくく、約-1.8℃で結氷する。
 11月下旬アムール川河口付近で生まれた流氷*は、サハリン北方の海岸に凍りつき動かなくなり、もっと北のシベリア沿岸やサハリン北東部の流氷が東樺太海流に乗り、サハリン東岸に沿って南下し、北海道沖に流れ着く。その年の気温などにもよるが、1月下旬から4月上旬まで見られることが多い。
 氷の下の海水はミネラルが多く、小さな藻類が繁殖しこれを動物プランクトンが食べ、このプランクトンが小魚の餌となり、魚やアザラシの餌となる食物連鎖の世界である。
 オホーツク海沿岸などの北海道周辺の海域は、北半球で最南端、南半球を含めても世界で最も低緯度に流氷*が見られる場所である。
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みどころ

流氷を体感するには、1)船で広大な氷原に出てその迫力を感じる、2)鉄道の車窓から連続する氷原を眺める、3)海岸まで降りて間近に見る、流氷の上を歩いたり海中に入って氷の下の生き物を見る、などがあり様々な楽しみ方がある。
 北海道網走市の流氷観光砕氷船「網走流氷観光砕氷船おーろら」、北海道紋別市の砕氷ドリルをもつ「ガリンコ号」が冬期間航行(夏期は釣りクルーズとして運航)している。船体が氷塊にぶつかり船全体が振動する迫力に驚かされるとともに、氷上の動物、悠然と飛ぶオジロワシや、氷の上で昼寝するアザラシを見られることもある。
 JR北海道が冬期間限定運行する網走ー知床斜里間の「流氷物語号」に乗車すれば、暖かい車内でゆっくりと車窓の流氷を楽しめる。また所々で停車するので、車外にでて展望台や道の駅で観光を楽しむことができる。さらに車窓からの景観で知床連山や斜里岳の美しい山容を眺めることもできる。
 網走市の二ツ岩から前浜まで、鱒浦から北浜までの海岸線に降りて間近に流氷を見ることができ、その氷の塊の大きさに驚かされるだろう。また条件がよければ流氷が波にもまれて擦れ合う時に生まれる「ギュゥーツ、ギュギュッ、ギューッ」と物悲しくも聞こえる氷の歌が聞こえることもある。
 斜里町のウトロではウェットスーツを身にまとい氷の上を歩く体験ツアーがあり、スキューバダイビングの経験者には氷の下のクリオネを見ることもできるという。
 こうした楽しみ方以外にも、網走市の「オホーツク流氷館」、紋別市の「道立オホーツク流氷科学センターGIZA」、「氷海展望塔オホーツクタワー」などでも流氷を学び、楽しむこともできる。
 わが国でもここでしか見ることができない特殊な自然景観であり、特に東南アジアの雪を見たことがない地域の人々には大人気である。
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補足情報

*アムール川の流氷説:以前、アムール川の氷がオホーツク海に流れ着くという説があったが、北海道立オホーツク流氷科学センター元所長の青田昌秋氏が調べたところ河口付近の氷は全く動かず、サハリン北部の氷がサハリン東海岸を南下して北海道までやってくることを確認した。
*最も低緯度の流氷:その要因としては、オホーツク海の地形的特徴による。1)シベリアからの-50℃にもなる冷たい北風が海面を凍らせること。2)シベリア、カムチャッカ半島、千島列島、北海道、サハリンの陸地に囲まれ暖かい海水が入ってきにくいこと。3)オホーツク海は浅い層の塩分が薄く密度が小さいため海水の対流が浅いこと、などである。

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