出島でじま

JR西九州新幹線・長崎本線長崎駅から南へ約1km、中島川を渡ったところにある。出入口は北側の中島川に架かる出島表門橋となる。出島は徳川幕府が、キリシタン弾圧とともに対外貿易の統制*を強め、窓口を長崎に限定する過程で、1634(寛永11)年に長崎の有力な町人に命じて扇形の人工島を築かせたのが始まりである。1636(寛永13)年に出島が完成すると、ポルトガル人を居住させ、出入りを厳しく制限した。島原の乱を契機にさらに統制は厳しくなり、1639(寛永16)年にポルトガル人の来航が禁止され、一旦、出島は無人となったが、1641(寛永18)には平戸からオランダ商館が移され、その役割を果たすことになり、1858(安政5)年に日蘭通商条約が締結され、1859(安政6)年に同地のオランダ商館が廃止されるまで続いた。
 江戸時代の出島の規模は、「長崎実録大成」(1760【宝暦10】年)によれば、面積は3,969坪1合(約1万5千m)で、扇形の外側にあたる南側の弧の長さは118間2尺7寸(約233m)、西側の幅は35間3尺8寸(約70m)で、65軒の屋敷・蔵・番人小屋などの諸施設があったと記録されている。
 現在の出島は、明治後期までに北側の削除、周囲の埋め立てが進み、扇形の形状ではないが、その貴重な価値が認められ史跡として指定された。長崎市は1951(昭和26)年度から出島の復元計画に着手し、1996(平成8)年度からは本格的な復元整備を進めている。現在はカピタン部屋(オランダ商館長の事務所兼住居)やヘトル部屋(オランダ商館次席の住居)など1820年頃(文政年間)の復元建物16棟、幕末期の建物2棟、現存する明治期の洋風建物2棟が建っている。
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みどころ

出島の北側、江戸町から中島川を出島表門橋で渡れば出島の表門となる。これを通って左手に行くと、かつての出島を15分の1の大きさに再現した「ミニ出島」があり、まず、ここでかつての出島の全体像を確認しておくと良いだろう。ここから出島の中心を通る200mほどの石畳の道を戻ると、左右に往時の姿を原寸大に復元した建物が建ち並ぶ。カピタン部屋やヘトル部屋などが続き、各施設とも資料が展示されており、出島発掘史料を展示する考古館の「旧石倉」、案内所兼出島シアターの「新石倉」の他、ミュージアムショップ、レストラン、着物レンタルショップなどが設けられている建物もある。
 復元建物や資料展示を見て回ってみると、この場が江戸時代、200年以上に渡って日本と西欧とを結ぶ唯一の窓口であったことをひしひしと感じることができる。当時、ここからもたらされたモノと情報と人が日本国内に与えた影響の大きさを考えると感慨深いものがある。
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補足情報

*キリシタン弾圧とともに対外貿易の統制:大航海時代、1543(天文12)年にポルトガル人を乗せた中国船が種子島に漂着、1549(天文18)年には鹿児島にフランシスコ・ザビエルが上陸しキリスト教が伝わった。1550(天文19)年に平戸にポルトガル船が来航、1571(元亀2)年には日本初のキリシタン大名である大村純忠が領内の長崎を開港し、ポルトガルとの貿易を開始した。ポルトガルやスペインは、カトリックの布教を貿易の条件としたため、長崎では盛んに布教が行われ、多くの住民がキリスト教に改宗した。1580(天正8)年、純忠は長崎の一部をイエズス会に寄進し、長崎の町は教会領となった。このことを危険視した豊臣秀吉は、1587(天正15)年にバテレン追放令を出し、翌年には長崎を直轄地とした。江戸時代に入ると、幕府は徐々に貿易の独占とキリスト教の禁教政策を強化していき、1624(寛永元)年にはスペイン船の来航を禁止し、1636(寛永13)年に出島が完成するとポルトガル人を収容しのちに退去させ、平戸からオランダ商館を出島に移転させ、海禁政策も徹底していった。
当時のオランダとの貿易の様子については「長崎古今集覧」(1811【文化8】年)によると、「阿蘭陀平戸より出島へ引越、日本渡海之儀、船数一年に十艘余、或七、八艘、惣銀高壱万貫目余(現在で百数十から二百億円程度か)、又は八、九千貫目程宛の荷物を積渡、相対商売致す」としている。貿易を許していたオランダや交流のあった中国大陸、台湾からは生糸や毛織物・絹織物・綿織物などの織物類や砂糖、書籍などが輸入され、日本からは銀や銅、樟脳、陶磁器、漆製品などが輸出された。なお、オランダに対しては、日本と貿易する条件として海外情勢に関する情報提供が義務付けられ、その内容は「阿蘭陀風説書」として文書にまとめられた。また、定期的な江戸参府も行われた。
関連リンク 出島(出島運営管理事務所)(WEBサイト)
参考文献 出島(出島運営管理事務所)(WEBサイト)
長崎市公式観光サイト「travel nagasaki」(一般社団法人長崎国際観光コンベンション協会)(WEBサイト)
「長崎の世界遺産めぐり「オトナ周楽旅行」ハンドブック」(一般社団法人 長崎県観光連盟 2019年1月)
世界大百科事典
長崎文献叢書 第1集 第2巻「長崎實録大成 第8巻」1973年 長崎文献社 145/247 国立国会図書館デジタルコレクション

2024年10月現在

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