筑後川(中下流)ちくごがわ(ちゅうかりゅう)

大分・熊本に端を発し、福岡・佐賀にまたがって流れる九州第一の大河。その長さ143km、流域面積2,860km2におよぶ。源は九重山地に発する玖珠川と阿蘇外輪山に発する大山川。このふたつの流れが日田盆地で合流して三隅川になる。さらに、大分・福岡県境の渓谷を経て筑紫平野へ流れ込んでいく。ここで筑後川と呼ばれるようになり、筑紫平野から佐賀平野へ、そして、有明海へと注ぐ。その間、佐田川、巨勢川、宝満川など多くの支流を集め、とうとうとした大きな流れを作っていくのである。
 このように長大な流れを誇っているだけに、筑後川流域には景観の異なったさまざまなみどころがある。上流の玖珠川には渓谷美の九酔渓や震動ノ滝があり、近くに筋湯、筌ノ口といった山のいで湯が湧いている。日田までの間には玖珠、湯ノ釣、天ガ瀬の温泉がつづく。また、大山川では渓谷沿いに宿の立ち並ぶ杖立温泉がよく知られる。
 水郷日田は、三隈川の鵜飼や屋形船、さらに河岸に湧く日田温泉と、川との結びつきが強いところ。そして、筑紫平野に入ると筑後川の流れに臨む筑後川と原鶴のふたつの温泉が湧く。流域中最大の町、久留米では篠山城跡や梅林寺、水天宮などのみどころがいずれも河畔にあって、筑後川がよい雰囲気を作りだしている。河口近くでは、水郷の町としてあまりにも有名な柳川がある。掘割をのんびりとどんこ船が行き交う様は、悠然とした筑後川のエンディングを飾るのにふさわしい風情といえる。
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みどころ

九州最大の広さで豊かな水量を誇り、筑紫平野を緩やかな蛇行を繰り返しながら貫流する。“坂東太郎”と呼ばれた利根川、“四国三郎”の異名をとった吉野川とともに日本三大暴れ川のひとつといわれた筑後川は“筑紫次郎”と名付けられ、周辺住民らから畏怖とともに愛されてきたことがわかる。
 治水の長い歴史があり、水流が激しい筑後川の水圧を緩和する治水構造である山田堰をはじめとした巨大な人工堰や、山田堰からの水を田畑に配給する三連水車などは、筑後川に歴史を伝える遺構であると同時に、大きな観光資源になっている。
 源流域にある、阿蘇山の火山活動に伴い噴出した温泉が多いのが特徴。中流域には日田温泉や原鶴温泉、筑後川温泉など著名な温泉地が多く、筑後川の楽しみの一つとなっている。また、これら温泉地を中心に発展したのが観光遊船で、古くは安土桃山時代末期から始まったとも。日田や朝倉では鵜飼も古くから行われ、それらを見るための屋形船なども魅力になっている。ちなみに、原鶴温泉では近年SUP(スタンド・アップ・パドルサーフィン)など、水面を使った新たなアクティビティも登場し、話題となっている。
 下流域でのみどころは、久留米市で行われる西日本屈指の規模を誇る筑後川花火大会がある。1650(慶安3)年の水天宮落成祝賀が始まりという歴史ある花火大会で、打ち上がる花火は1万8,000発。筑後川沿岸から打ち上げられ、川面に映った花火が美しい。