高知県立牧野植物園こうちけんりつまきのしょくぶつえん

1958(昭和33)年、高知県が生んだ植物学者、牧野富太郎*博士の業績を顕彰するため、高知市・五台山にある竹林寺の境内を譲られて開かれた県立の植物園。
 約8haの園地には、博士ゆかりの植物など3,000種類が四季を彩り、1999(平成11)年に新設された牧野富太郎記念館では、博士の生涯を紹介する常設展に加え折々の企画展を開催している。
 また、牧野博士の蔵書、遺品など約6万点を収蔵する牧野文庫や、国内外の標本約34万枚がおさめられた標本庫もあり、研究、教育の施設が整えられている(牧野文庫・標本庫は調査研究目的のみ利用可、ほかに一般閲覧可能な図書室がある)。その他、雰囲気のあるモダンなレストラン、カフェがある。
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みどころ

森に分け入るような土佐の植物生態園がアプローチとなり牧野富太郎記念館へいざなわれる。記念館は建築家・内藤廣の代表作に数えられる建物(村野藤吾賞受賞作)で、台風銀座高知の山上にふきつける風雨に耐えるべく風工学の実験をしながらデザインされた。庇の低い地に伏せたような建物の周りには職員が集めた牧野博士ゆかりの樹木などが植えられていて、それらが伸びていくにしたがい建物と周辺の環境がより強靭性を増していく。庭園中央部では、段々畑だったような斜面に開かれた園地の立体的な造形と通路の妙により、趣異なる風景が次々と観覧者の前に現れる。
 1999(平成11)年リニューアル時に全体の庭の形を託された稲田純一はシンガポール政府の庭園的都市開発に携わってきた造園家。リニューアル後も「五〇周年記念庭園」(2008(平成20)年)や新温室建造(2010(平成22)年)をてがけた。温室入口付近はアコウなどが植栽された太古の洞窟のような9mの塔で、園内でも特にフォトジェニックな空間として知られている。南園の「お馬道」は、民謡「よさこい節」にかんざしを買ったと唄われた僧、純信のいた南の坊と想い人、長江のお馬の生家をつなぐ旧来の道。洗濯物を持ってお馬が通ったという。
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補足情報

*牧野富太郎:1862(文久2)~1957(昭和32)年。高岡郡佐川町の生まれ。「日本の植物分類学の父」といわれる植物学者。世界的に有名な植物学者。独力で植物分類学を学ぶ。その生涯において、日本の植物に最も多くの学名を与え、新種や新品種など1,500種類以上の植物を命名。著書に「大日本植物志」「牧野日本植物図鑑」などがある。第1回文化功労者、のち文化勲章受賞。1999(平成11)年に園地面積を大きく拡張する際、新たに迎えた園長を中心に本格的な研究機能を持つ植物園づくりに着手、新設の「牧野富太郎記念館」はその拠点施設となった。教育普及、憩いの場や観光集客の機能強化も求められ、以後もそれらに応えるべくより総合的にリニューアルが重ねられている。
関連リンク 高知県立牧野植物園(WEBサイト)
参考文献 高知県立牧野植物園(WEBサイト)
【公式】高知県立牧野植物園 youtube
『やまとぐさ 高知県立牧野植物園研究報告』高知県立牧野植物園 弘文印刷株式会社
『五台山物語』里見剛 高知新聞社

2023年02月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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