遊子水荷浦の段畑ゆすみずがうらのだんばた

「耕して天に至る」という言葉がぴったりの段々畑の集積。住民が石を積み、造成した幅1m、高さ1.5m前後の狭くて細長い畑が、海岸の集落近くから山頂までに続いている壮大な景観。宇和海沿岸部には稲作に適した土地が少なかったことから、人々は山の斜面を開墾し江戸時代の終わりころにはサツマイモの栽培が行われていたが、明治末から大正にかけて盛んとなる養蚕経営に併せて桑が栽培されるようになり、畑の石垣化が進んだと言われている。昭和になって再びサツマイモが栽培されたが、やがて海面養殖産業が活気を見せると団畑は次第に耕作を放棄され、一時はその多くが山野に帰り始めた時期もあったが、近年地元有志の尽力で段畑の復旧が進み、現在では馬鈴薯(ジャガイモ)の栽培が行われている。
 景観保持の活動を続けているNPO法人「段畑を守ろう会」では、段畑のふもとにある「だんだん茶屋」*を運営するとともに、段畑のオーナー制度を設け、春には収穫祭を実施している。
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みどころ

段畑のふもとにある「だんだん茶屋」から石垣で囲まれた畑の間の石段を山頂に向かって登ることができる。古くより地域の人々が急な斜面を手作業で切り開いてきた歴史の重みを感じるとともに、1枚1枚の畑の幅の狭さと人力で運び上げたであろう石材の量に驚く。高く登ると段畑全体の造形美を目にする一方で、下方を見ると40度もある急傾斜にスリルを感じる。はるか眼下には青く広がる宇和海に、点々と養殖筏が浮かぶ絶景を鑑賞できる。
 なお、宇和島市内から陸路で約40分かかるが、至る所に入り組んだリアス式海岸や真珠養殖場が有り楽しむことができる。
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補足情報

*だんだん茶屋:地元の食材を使った食事や特産品の購入ができる交流施設。