宇和津彦神社秋祭うわつひこじんじゃあきまつり

宇和津彦神社は景行天皇の一子、宇和津彦命を祭る古社で、792(延暦11)年、土佐国高賀茂社から味鉏高彦根命を移し、1648(正保5・慶安元)年には社殿を修営、大己貴命(おおなむちのみこと)を併祀(はいし)した。藩政時代には伊達氏の崇敬が厚かった。毎年10月29日に行われる秋祭では、裏町一丁目の八ツ鹿(やつしか)保存会、大工町の猿田彦ねり保存会、佐伯町の獅子舞保存会、丸穂牛鬼保存会などが各所で練りを披露し、祭りを盛り上げている。当日16:00から、商店街の中心地で御旅所祭が行われた後、各団体が順番に練りを奉納する姿を見ることができる。
 宇和島地方に古くから伝えられている八ツ鹿踊り*は、仙台藩主伊達政宗の長男、秀宗が1615(慶長20・元和元)年に宇和島藩に入部した後に始められたとされるもので、350年余の伝統を持っている。仙台藩領にあり、太鼓を前に抱えて打ちながら踊るしし踊りは、宮城県各地に普及しており、その中で雄鹿たちが雌鹿をたずね探して遂に発見して喜ぶ「めじしかくし」という踊りが、宇和島に定着して現在に至ったとみられる。
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みどころ

八ツ鹿踊りの原型となった東北のしし踊りは活発で、頭も鹿頭ではなく、権現型といわれる獅子頭で、とても勇壮である一方、鹿踊りの哀調を帯びた旋律はゆったりと大変優雅である。
 牛鬼が豪快勇壮、あくまでも男性的な練り物であるのに対し、鹿踊りは優美繊細、女性的な舞踊であって、両者とも、宇和島を中心とする南予一円の代表的な風流芸能である。牛鬼は炎熱の夏祭りにふさわしく、鹿踊りは、さわやかな秋祭りの風物として申し分ない。
 祭り前日の28日には宵宮祭が行われ、各練りが宇和津彦神社に集合する。19:00からの神事の後、順番に練りを奉納していくが、やわらかな提灯の灯りの中で行われる練りは大変美しく、境内から溢れるほどの見物客で賑わいを見せる。
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補足情報

*八ツ鹿踊り:鹿の頭をつけ、その面から垂れた紅染めの布で顔をかくし、手甲、脚半(きゃはん)、草履ばきで、胸に太鼓をつるした9~12歳の少年8人が、胸の太鼓を打ちながら舞うというもの。