栗林公園りつりんこうえん

高松駅から南へ3km、紫雲山(しうんざん)*東麓にある、面積約75haにも及ぶ広大な庭園。紫雲山を背景に6つの池と13の築山で構成され、1000本を超える手入れ松や多彩な石組を配した園内は変化に富み、歩みを進めるごとに風景が変わる「一歩一景」と称される。南庭と北庭とに分かれ、南庭は池泉回遊式大名庭園として優れた地割りや石組みを有し、北庭は鴨場として使われてきたが、明治末から大正初期にかけて近代的に整備改修された。
 南庭の南の端にある室町時代に作られた「小普陀」(しょうふだ)*と呼ばれるところが最も古いとされる。天正年間(1573~1592)に生駒氏*の家臣となっていた地元の豪族・佐藤道益(どうえき)の屋敷が、現在の栗林公園の南西部にあり、1625(寛永2)年から1639(寛永16)年にかけて行われた西嶋八兵衛による香東川の付け替えによってできた川床跡や伏流水を利用して、庭を造ったとみられる。1642(寛永19)年、生駒氏の後に入封した松平頼重は生駒氏の庭を引き継いで整備し、隠居後は園内に御殿を建てて住み、栗林荘と称した。また、北庭に鴨場をつくった。その後も歴代藩主によって整備が進められ、南庭は1745(延享2)年、5代藩主頼恭(よりたか)の時代に完成した。その後、明治維新に至るまでの228年間、高松松平家の下屋敷として使用された。
 南庭の中心的な建物である掬月亭(きくげつてい)は、江戸初期に建てられた数寄屋風書院造りの建物で、茶室を備える。四方正面で、床を低くし、壁が少ない亭内からの眺めは開放感にあふれる。1899(明治32)年に香川県博物館として開館した商工奨励館は、平等院を模した左右対称の木造建築。2015(平成27)年の大規模改修後は、特産品や工芸品などを展示・紹介に加え、イベント・レセプションにも使用できる迎賓館の機能も付加された。休憩スペースやカフェを併設している。讃岐民芸館は、1965(昭和40)年に開館した土蔵造りの古民芸館に新民芸館・惜々亭・瓦館が加わり4館で構成されている。2022(令和4)年にリニューアルし、讃岐の民具、工芸品、瓦を展示の他、休憩所としても利用されている。
 園内は梅、桜、花しょうぶ、蓮、紅葉など四季折々の風物にも恵まれ、地元市民にも親しまれている。
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みどころ

入口は北と東にあり、今は大通りに面した東口の切手御門が正門のようになっているが、本来の正式な門は北口の嶰ノ口(かいのくち)御門であった。大名庭園のなかでも三名園をしのぐともいわれる造形美をもつ名園で、広大でありながらも一つ一つの造作(景)に趣向が凝らされており、また変化に富んでいて退屈しない。園内きってのビュースポットは富士山を模して造られたともいわれる築山・飛来峰で、南湖を見下ろし、手前に偃月橋(えんげつきょう)、奥に掬月亭を望む。南湖を周遊する和船(1周約30分)があり、江戸時代の舟遊びさながらに、ハート型の「恋つつじ」のある「杜鵑嶼(とけんしょ)」やカエデの多い「楓嶼(ふうしょ)」などの中島に近づくことができ、水面から眺める風景もまた格別である。園内には約1,400本の松があるが、石組で表現した亀の背で鶴が舞うように見える「鶴亀松」、連続する造形美が見事な「箱松」と「屏風松」、1833(天保4)年に9代藩主松平頼恕(よりひろ)が将軍家斉から賜った盆栽が巨木(高さ約8m、幹回り約3.5m)に成長したものと伝えられる「根上り五葉松」はぜひ見ておきたい。なお、鴨場だった北庭には1993(平成5)年に鴨引き堀が復元されている。
 開園時間は日の出に合わせて設定されており、4月から9月は早朝5時30分、12月から2月でも7時に開園する。人が少ない早朝は写真撮影に最適で、朝食を提供する茶屋もある(要予約)。桜の季節と紅葉の秋には夜間のライトアップが行われ、幻想的な雰囲気を楽しめる。園内には喫茶や軽食を楽しめる食事処も多く、東門横にある「栗林庵」は県産品のアンテナショップで、県内随一の品揃え。(勝田 真由美)
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補足情報

*紫雲山は稲荷山(166m)と室山(199m)という二つの山の総称。
*小普陀:中央部110個、東側15個、西側17個の石で築山を形成しているもの。
*生駒氏:豊臣秀吉の四国平定後の1587(天正15)年、生駒親正が秀吉から讃岐1国を与えられた。親正の子・一正は関ヶ原の戦いにおいて東軍に加担したため、戦後に所領を安堵された。しかし、第4代藩主・高俊の代の1640(寛永17)年にお家騒動(生駒騒動)により改易され、出羽国矢島藩に転封された。
*名前の由来:1640(寛永17)年頃には「栗林」の名がすでに使われており、現在まで引き継がれている。栗の木が群生していた、種類に限らず木が生い茂った里山のことを中国では「栗林」と呼ぶなど、諸説あるがはっきりしない。
関連リンク 高松市(WEBサイト)
参考文献 高松市(WEBサイト)
うどん県旅ネット(公益社団法人香川県観光協会)(WEBサイト)
『香川県の歴史散歩』山川出版社

2022年11月現在

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