千畳閣(豊国神社本殿)せんじょうかく(とよくにじんじゃほんでん)

千畳閣は、嚴島神社の北東側の高台に位置する。豊臣秀吉が武士の鎮魂のために月に1度の千部経*の転読*供養を行うため、1587(天正15)年に発願し、安国寺恵瓊*に建立を命じた大経堂。島内では最も大きな木造建築物で、畳857畳分の広さがあることから千畳閣と呼ばれてきた。秀吉の死によって工事が中止されたため、天井板や壁は張られず、正面の階段もない未完成のまま、現在に至っている。明治の神仏分離令により仏像は大願寺に遷され、大経堂から秀吉を祀る豊国神社となった。嚴島神社末社であり、嚴島神社に奉納された絵馬が多数飾られている。
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みどころ

江戸時代から交流の場・納涼の場として人々に親しまれていたようで、大きな柱には当時の歌舞伎役者一行の名や川柳などが記されている。天井や壁がなく、開放的で広々とした空間は気持ちよく、吹き抜ける風が心地良い。嚴島神社を俯瞰できる眺望は素晴らしく、嚴島神社側からみたときの背景としても秀逸。
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補足情報

*千部経:僧侶が500人、千人、あるいは一人で一つの経の読誦が千回になるよう誦経する、祈願や追善の法要。
*転読:長い経文を読む場合、経題と経の一部だけを読んで全体を読むのに代えること。
*安国寺恵瓊(あんこくじえけい):毛利氏の外交僧として、また、豊臣秀吉の直臣大名として活躍した僧。