観音院かんのんいん

補陀洛山慈眼寺観音院(ふだらくさんじげんじかんのんいん)は、多くの社寺が集積している鳥取市の北東丘陵地にある天台宗の寺である。JR鳥取駅から東に1.6kmに位置する。境内にある日本庭園が江戸時代初期を代表する名園、観音院庭園として知られている。観音院は1632(寛永9)年の池田光仲の国替えに伴い雲京山観音寺として栗谷に建立された。その後栗谷の寺地は御用地となり、現在地に移転し、補陀落山慈眼寺観音院と改称した。庭園の作庭時期は諸説あるが、鳥取東照宮別当寺院淳光院が建立された慶安3年(1650)頃までには観音院の諸堂も完成し、庭園もこの事業の一部として作庭されたといわれている。
 傾斜地形を生かした池泉鑑賞式日本庭園である。1937(昭和12)年に国の名勝に指定されている。
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みどころ

庭園は京都風の蓬莱様式が特徴である。蓬莱様式とは、道教で不老不死の仙人が住むと言われる蓬莱山(蓬莱島)や、長寿の象徴である鶴や亀をモチーフにした島(鶴島、亀島)を表す石組みが主役となる庭園である。
 正面の大半を占める池とその中島の石組み、正面右手の芝生の築山がそのまま借景である背後の源太夫山に繋がっているかのように見える配置となっている。鳥取市内にある庭園の中では人工物の見えない緑の借景が見どころである。
 書院から観賞する庭園であるため、拝観料を支払ってゆったりと提供される抹茶・茶菓を頂きながら時間を過ごす楽しみ方が望ましい。さらに、参道の桜並木、秋の紅葉、冬の雪景色など、季節に応じて様々な表情を見ることができる。また、庭の右手には1957(昭和32)年に鳥取県指定保護文化財となった切支丹燈篭(きりしたんどうろう)*がある。切支丹灯籠は江戸時代に迫害されていたキリスト教徒が十字架を灯籠に形を変えて礼拝したもので、花崗岩製の灯篭は本来、台座、棹、中台、火袋、笠、宝珠の6部で成るが、ここの灯篭はその棹石だけを残したものと考えられている。
 観音院は鳥取藩池田家の祈願所8ヶ寺の1つで、東照宮を始めとする周辺の寺院群と一緒に周遊するとより歴史観光の楽しみを深めることができる。また、中国三十三観音霊場*の三十二番札所にあたる。
 なお、観音院御本尊の聖観世音菩薩は安置される壇が移るたびに大きな寺の御本尊となっていったことから、別名「出世観音」と呼ばれており、ゲンをかつぐ参拝者も訪れている。
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補足情報

*切支丹燈篭(きりしたんどうろう):鳥取藩主・池田光仲は切支丹を庇護していたことから、鳥取市内には観音院を始めとして池田家の菩提寺である興禅寺、一行寺、東昌寺、西町二丁目に5基が残されている。
*中国三十三観音霊場:1982(昭和57)年に開創された。第一番札所・岡山市西大寺に始まり、第三十三番札所・鳥取市大雲院で巡礼満願を達成する霊場で、岡山・広島・山口・島根・鳥取の中国五県にまたがるものである。自然の風光に富んだ旅情豊かな各地を結ぶ巡拝路は、観光を兼ねた巡礼の多い現代にふさわしい。
関連リンク 補陀落山観音院 名勝観音院庭園
参考文献 補陀落山観音院 名勝観音院庭園
「鳥取県の歴史散歩」山川出版社,鳥取県の歴史散歩編集委員会編
鳥取市観光サイト

2024年07月現在

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