大晦日の12月31日の夜、祇園にある八坂神社にお詣りし、「をけら灯籠」からをけら火を火縄・吉兆縄（きっちょうなわ）＊に移し、火が消えないように縄をくるくる回しながら自宅に持ち帰るものである。かつてはこの火で新年の雑煮を炊き、神棚の灯明を灯して、一年間の無病息災を祈願した。現在は公共交通機関にこの火を持って入ることが禁止されており、火を消した吉兆縄を火伏のお守りとする。江戸時代は灯火が消えた後、暗闇で悪口を互いに言い合う「悪口祭」＊の一面をもっていたという。
　1月1日午前5時からは本殿で白朮祭（をけらさい）が行われる。本殿前において、木の板に載せられた火のついた削掛（けずりかけ）と呼ぶ鉋屑（かんなくず）が本殿前の地面石畳に投げ落とされる。この鉋屑には生薬の白朮＊が混ぜられており、その独特の匂いが災厄を遠ざけるという。石畳に落ちた火を火縄に移し持ち帰ることもでき、本来のをけら詣りは、この本殿前にまかれた火をもらう行事であったといわれる。