浄蓮の滝じょうれんのたき

伊豆急行線河津駅から国道414号線経由で北西に約21km、湯ケ島温泉*1からは南へ2.3km。狩野川の最上流、伊豆東部火山群に属する鉢窪山と丸山が約1万7000年前の噴火でスコリア丘*2として生成され、その際の溶岩流で形成された茅野台地の溶岩末端崖にできたのが浄蓮の滝である。このため、滝脇の溶岩末端崖には溶岩が冷える際に形成された柱状節理をみることができる。滝の高さは25m、幅は7m。
 国道414号線の「浄蓮の滝バス停」から遊歩道を300mほど下ったところに滝壷がある。周囲は樹林とハイコモチシダが繁茂し、滝下の渓流沿いには、湧水によるワサビ田が続いている。
 滝の名前*3は、かつてこの地に浄蓮寺という寺院があったことにちなむといわれている。また、バス停からほぼ旧天城街道(下田街道)に沿って登り、途中、旧天城トンネルを越え賀茂郡河津町湯ケ野バス停まで、川端康成の小説「伊豆の踊子」にちなんだ「踊子歩道」*4が整備されている。
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みどころ

小説「人生劇場」などで知られる日本浪漫主義派の作家、尾崎士郎は「瀧は没落の象徴である。その没落がいかに荘厳であるかということについて説こう。私は一日天城の峻嶺を越え、帰途、山麓の雑木林の中の細径に、しめやかな落葉のにおいを踏んで浄簾の瀧の前に立った。冷々とした水煙を頬に感じながら、私は夕暮るる大気の中を白々といろどる瀧を眺めた」と浄蓮の滝を通し、自らの人生観、文学観を示している。
 確かに、滝を眼前にすると、山の冷気と水しぶきが迫り、その荘厳さが一層増し、文豪の心まで揺さぶるものであることが実感できる。
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補足情報

*1 湯ヶ島温泉:伊豆半島のほぼ中央、天城山の山懐、狩野川と猫越川の合流点に湧く。「伊豆の温泉はたいていよく知っている。山の湯としては湯ヶ島が一番いいと思う」と書いた川端康成をはじめ多くの文豪が愛し、逗留した温泉。川端康成は「一高生の私が初めてこの地に来た夜、美しい旅の踊子がこの宿に踊りに来た」と、小説「伊豆の踊子」はこの地での体験がもとになったとも書き残している。                                                                                *2 スコリア丘:火山の噴火でできるスコリア(岩滓)が火口周辺に堆積して形成されたお碗を伏せたような形をした小丘。主に玄武岩質や安山岩質のマグマを噴出する火山の山頂部や山腹に生じる。スコリア(岩滓)は火山岩塊、火山礫、火山灰などのこと。      
*3 滝の名前:江戸後期に書かれ、明治に増訂された「豆州志稿」では、「廃浄蓮寺」は「山中ニ遺址及門前畑ノ名存ス」とし、浄蓮の滝については「三階瀑」の名で紹介し、「浄蓮瀑」は別称としており、「極テ壮観ナリ 或ハ以テ州中第一トス是狩野川ノ水源ナリ」と記述している。                                      
*4 踊子歩道:約18.5kmのハイキングコース。浄蓮の滝バス停―伊豆の踊り子像ー天城遊々の森ー旧天城トンネル―河津七滝ー福田家ー湯ケ野バス停。

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