臨済寺りんざいじ

JR東海道本線・東海道新幹線静岡駅から北へ約3km、静岡浅間神社からは約1kmの賎機山(しずはたやま)東麓にある。臨済宗妙心寺派。山門につづく境内は築地塀・石段・踏み石が直線的に整然と配され、禅寺にふさわしい厳粛な雰囲気が漂う。1536(天文5)年に今川義元*1が兄氏輝の菩提寺として、妙心寺の住持などを歴任した大休宗休に請い、開闢、創建した。
 さらに太原雪斎*2を住持として招いた。幼年期に今川氏の人質であった徳川家康(幼名竹千代)は、この太原雪斉から薫陶を受けた。現在の伽藍は天正年間(1573~1592年)、家康が3世東谷和尚に再興させたもの。境内横手に今川義元の廟がある。
 方丈庭園は地割りが複雑で、上中下の3台地に分け、石とサツキ・ツツジ・ソテツを配した刈り込みを主とし、中・下2段にある池泉は滝組でつながっている。江戸時代の作庭で地方色の濃い禅宗庭園。修行寺のため、山門内、仏殿前より中央石段を上がり本堂(方丈)前までは参拝できるものの、内部の拝観はできない。内部、庭園などの拝観は年2回春・秋に特別公開*3をしている。
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みどころ

賎機山のこんもりした緑に包まれるように建つ。山門はどしりとした構えで、石段に吸い込まれるように上って行くと、入母屋造、こけら葺きの本堂が建ち、江戸初期の形式をよく残し、素朴だが京風の洗練した風情をみせる。修行寺のため、静まり返った境内に時折、読経の声が漏れ聞こえ、厳粛な気持ちにしてくれる。
 方丈庭園は賎機山の傾斜を利用し、上下10m以上の高低差があり、方丈裏・書院・茶室と3段の高さでそれぞれの景観を鑑賞できるようになっている。書院から茶室に渡る50段の階段廊下から見る景色が一番よいとされ、禅宗庭園の落ち着きのある雰囲気を楽しむことができる。
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補足情報

*1 今川義元:1519(永正16)~1560(永禄3)年。駿河今川氏は初代の範国が足利尊氏から1336(建武3)年に遠江国の守護に、翌年(または翌々年)に駿河国守護を任ぜられ、200年余りこの地を支配した。1536(天文5)年に今川氏の家督を継承した義元は、三河、遠江での勢力を固め、東海道の有力武将となった。しかし、上洛を目指す途中、桶狭間の戦いで織田信長に討たれた。
*2 太原雪斎:1496(明応5)~1555(弘治1)年。崇孚。臨済宗の僧であるが、義元の政治顧問としても活躍した。
*3 特別公開:今川義元の命日にあたる5月19日と、摩利支天祈祷会が執り行われる10月15日の年2回。別途「特別拝観・修行体験」などが開催されることもある。

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