荘川桜しょうかわざくら

東海北陸道荘川ICの北約9.1km、御母衣(みぼろ)ダム湖岸の国道156号線沿いの中野地内「荘川桜公園」に、2本の大きなサクラが並び立っている。ともに樹高約20m、目通り幹囲約6m、樹齢約500年余の老桜で、種類はアズマヒガンサクラ。元々は、ダム湖の湖底に沈んだ集落の寺にあった木を、ここに移植したものである。例年4月下旬~5月上旬に薄いピンク色の花が咲く。
 御母衣ダムは、土や岩石を材料として盛り立てて造られたロックフィルダム。庄川を堰き止めて1961(昭和36)年に完成し、高さ131m、長さ405m、湖水面積8.8km2、最大出力215,000kwという日本屈指の巨大な規模を誇る水力発電のダム湖である。
 荘川桜から10kmほど北のMIBOROダムサイドパーク 御母衣電力館・荘川桜記念館では、サクラの移植工事の映像を含むドキュメンタリービデオ「桜守の詩」が見られ、荘川桜を紹介している。
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みどころ

春の開花時には、樹高約20m、目通り幹囲約6mという2本の大きな大木に、薄いピンク色の花が四方にのびた枝々を包み込み、美しく咲き競う。
 ダム湖底に沈む運命にあったサクラを、ダムを建設した電源開発株式会社(Jパワー)の初代総裁高碕達之助が、救いたいと奔走した。当時、移植は不可能だという声も多くあった中、専門家や職人達の手により、1960(昭和35年)年12月、移植が成功した。見事に蘇生し活着したサクラのもとで、1962(昭和37)年6月「水没記念碑除幕式」が開催された。高碕氏が、サクラのあった旧荘川村に因んで「荘川桜」と命名、「ふるさとは 湖底(みなそこ)となりつ うつし来し この老桜 咲けとこしへに」と詠んだ。
 荘川桜は、多くの人々が注ぎ込んだ情熱に応え、今もいにしえと変わらずに見事な花を咲かせて、自然と人間との物語を綴っているように感じる。