戸隠山とがくしやま

「天岩戸神話」*を秘めた戸隠山は、凝灰質の集塊岩からなり、戸隠高原北西部に屏風のようにそそり立つ連峰のうちの一つである。
 この地域の北信五岳*のうち戸隠連峰だけが岩稜の山であり、連峰は西岳と、八方睨から五地蔵山までの表山、それに高妻山・乙妻山の裏山の3つの山塊からなる。一般には戸隠山といえば表山を指す。表山は平安時代に修験道の行場として開かれ、険峻な岩場が連続し、特に蟻の塔渡り(ありのとわたり)は難所として知られる。
 登山口は戸隠神社奥社入口からと戸隠キャンプ場からとがあり、周遊することも可能である。ただし、鎖場が多く、両側が切れ落ちる幅30cmの蟻の塔渡りなどもあるので、登山に際しては十分な注意が必要である。
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みどころ

山頂周辺部のぎざぎざの岩峰が迫力がある。この山容を眺めるにはあまり近づくと樹林が多いため確認しにくく、戸隠神社奥社周辺では山体すら確認できない。間近での写真撮影スポットは戸隠神社奥社の南側に位置する鏡池がベストポジションであり、湖面にシルエットを映し出す時、また紅葉時にも多くのカメラマンが集まる。その他戸隠連峰を望むには、樹林よりも高い位置の戸隠スキー場や、少し離れたバードライン途中から等がよい。また遠方からの場合、善光寺平まで離れると高妻山とともにきれいな山容をのぞむことができる。
 登山口になる戸隠神社周辺は樹齢四百年超の杉並木が続く荘厳で神聖な雰囲気であり、険しい岩山との対比に感動すら覚える。戸隠山の山頂手前の稜線上は展望が開け、八方睨ではその名が示す通り、後立山連峰や南・中央アルプスが望める。
 帰り道の戸隠そばも楽しみのひとつである。(林 清)
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補足情報

*天岩戸神話:神話に登場する太陽神的性格の女神の天照大神は、弟の素戔嗚尊(すさのおのみこと)の乱行にたまりかね天の岩屋にかくれてしまった。神々は集まって評議して対策を練った結果、岩屋前で天鈿女命(あまのうずめのみこと)に踊らせ、騒いだ。不思議に思った天照大神は岩屋の戸をすこし開けた。そのとき、陰に隠れていた力持ちの天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)が岩戸を投げ飛ばし、天照大神を岩屋から連れ出した。この時投げた岩戸が信濃国に落ちて、戸隠山になったという神話である。
*北信五岳:新潟・長野県境にある5つの独立峰を総称して北信五岳という。1カ所からすべてを望むことは難しいが、長野市から千曲市あたりにかけて眺めることができる。東側からの眺めは、右から斑尾山、妙高山、黒姫山、戸隠山、飯縄山と連なり、四季折々に美しい山並みを形成し、それらは多くのトレイルで結ばれている。
関連リンク 戸隠観光協会(一般社団法人戸隠観光協会)(WEBサイト)
参考文献 「長野市ここから旅の始まり」 長野市ガイドブック (公財)ながの観光コンベンションビューロー
「戸隠」パンフレット」 戸隠観光協会
「長野県の山」 山と渓谷社
「信州山歩き地図Ⅰ」 信濃毎日新聞社
「甲信越百名山」 山と渓谷社

2022年09月現在

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