戸隠そば(信州そば)とがくしそば

「信濃では月と仏とおらがそば」と一茶の句にもあるように、そばは信州の代表的な名産である。
 そばは白い清楚な花を夏と秋に咲かせる。いわゆる夏そばと秋そばで一年に二回収穫される。白い花が咲いたのち黒い皮におおわれた種実ができる。この種実をひいて、胚乳部を出し、これを粉にしたのがそば粉で、つなぎに小麦粉を入れて作る。
 そばは奈良時代に伝来したといわれ、携行食品として用いられ、粥状にしたり、そばがきにしたりして食された。現在のように「そば切り」にして食べるのが盛んになったのは江戸時代初期といわれる。
 戸隠地域では、この地の冷涼な気候がそばを育て、戸隠神社に訪れる人々が好んで食したため発展していき、著名となった。現在も多くの宿坊と共に飲食店で提供されている。
#

みどころ

そばは霧下そばともいわれるように、春・秋に霧の発生するような高冷地に適し、地味のやせた土地でも育つため、信州では多く栽培されてきた。そのはじまりは山岳修験道の開祖で奈良時代に活躍した役小角(えんのおづぬ)で、携行食としていたそばの実を村人に伝え、栽培方法とともに広がったという伝説が各地に残る。
 長野県内には多くのそばの産地があり、ご当地そばも多い。なかでも、「戸隠そば」をはじめとして、「高遠そば」、「富倉そば」(飯山市)、「須賀川そば」(山ノ内町)、「とうじそば」(木曽地方奈川)は有名。
 「戸隠そば」は風味がよく、高原の冷たい水で締められるため、つるりと喉越しがよい。特筆すべきは、その盛り付け方。戸隠の伝統工芸「根曲り竹細工」のざるに、「ぼっち盛り」*と呼ばれる小分けにして盛られている。
 戸隠神社のお膝元であるこの地には、そば屋のほか宿坊などでもそばが提供される。その数30店舗以上。標高1,000m以上の地にこれほどのそば屋が集中しているのは珍しい。特に戸隠神社の荘厳な雰囲気の中で食するそばは、食べ物の見た目の美しさ、食する場所の雰囲気の大事さを教えてくれる。(林 清)
#

補足情報

*ぼっち盛り:ぼっち盛りとは、一口サイズのそばの束を5束ほど用意し、ざるに並べる盛り方のこと。この5つのそばの束は、戸隠で言い伝えられている五神を表しているといわれている。五神は、天鈿女命(あめのうずめのみこと)、九頭龍神(くずりゅうしん)、天表春命(あめのうわはるのみこと)、天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)、天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)。見た目の美しさと、一口サイズで食べやすいという理由も相まってこの盛り方が定着している。
関連リンク 戸隠観光協会(一般社団法人戸隠観光協会)(WEBサイト)
参考文献 戸隠観光協会(一般社団法人戸隠観光協会)(WEBサイト)
Go NAGANO長野県公式観光サイト(一般社団法人長野県観光機構)(WEBサイト)
「戸隠」 パンフレット 戸隠観光協会

2022年09月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

あわせて行きたい