鈴木牧之記念館すずきぼくしきねんかん

越後の冬の風物や雪の中で暮らす様子をまとめた雪の本『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』を世に出した鈴木牧之*(1770~1842年)の記念館。
 牧之は、縮の仲買と質屋をする家業に生まれ、19歳ではじめて江戸に行ったことがきっかけで雪国の暮らしを伝えようと出版に生涯をかける。
 雪の本の執筆活動には紆余曲折あったが、40年という歳月をかけて出版された『北越雪譜』は、気象・雪の暮らし・生き物・産業・伝説などが紹介され、江戸でベストセラーとなったと伝わっている。1936(昭和11)年に岩波文庫から出版されると全国に広まり、現在は英語、ドイツ語、中国語と翻訳されている。
 また牧之は多くの著書を残している。子孫への教訓書である「夜職草(よなべぐさ)」。新潟と長野境の秋山の暮らし、慣習などを記録した「秋山記行(あきやまきこう)」は現在民族学的に高い評価を得ている。
 館内には『北越雪譜』の初版本をはじめ、出版にまつわる遺墨資料、また「秋山記行」関連の展示、雪国に関係する資料の展示、国の重要無形文化財でユネスコ無形文化遺産である「越後上布」の製作工程の道具や、越後上布、塩沢紬なども展示されている。
#

みどころ

鈴木牧之記念館は1989(昭和64・平成1)年に開館、新潟県産のスギ材を多用した克雪型大規模木造建築で、雪国特有のせがい造りで木造の暖かさを感じることができる。
 館内は『北越雪譜』を基とした展示構成で、雪花図、吹雪、雪崩、幽霊、異獣など物語や雪国の暮らしなどが理解できる。
 記念館から徒歩1分で牧之の名がつく雁木造りの「牧之通り」が楽しめる。(溝尾 良隆)
#

補足情報

*鈴木牧之は、40年の歳月をかけて1842(天保13)年に『北越雪譜』を出版する。出版には様々な江戸の文人の協力を得ていた。当時戯作者として有名だった山東京伝に依頼、見積り額が合わず断念。岡田玉山、鈴木芙蓉に頼むが亡くなる。そして流行作家として有名になっていた滝沢馬琴に依頼し12年も執筆原稿を送る。しかし、多忙を理由に馬琴とは出版に至らず、山東京山の力で世に出る。牧之68歳、生涯をかけた事業といえる。牧之は73歳で没。
関連リンク 鈴木牧之記念館(WEBサイト)
関連図書 鈴木牧之編撰『北越雪譜』岩波文庫、1978年3月
参考文献 鈴木牧之記念館(WEBサイト)
パンフレット「鈴木牧之記念館」
『新潟県の歴史散歩』山川出版、2009年

2022年06月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。