苗場山頂周辺の湿原なえばさんちょうしゅうへんのしつげん

標高2,145m。新潟・長野の県境に、南にゆるやかに傾く広大な山頂をもつ火山で、なだらかな山頂には高層湿原が発達し、オオシラビソノの樹林の間には、径数mから20mほどの池塘が何百も点在している。まさに天上の楽園の言葉にふさわしい。山名が表わすように、むかし池塘は苗田と考えられ、神が稲を植えた所と伝えられている。北面の中腹には小松原湿原もあり、ここもシラビソの林に囲まれ、池塘があちこちに点在し、高山植物が密生している。
 苗場山は成層火山で、現在のピークと北にある神楽ケ峰との間にあった山頂が、浸食によって失われ、ゆるやかになったのである。高層湿原の台地は、東西2~3km、南北4km、面積約10km2に及んでいる。湿原ができ始めたのは、割合に新しく4000年ほど前で、このころ始まった機構の寒冷化とそれに伴う積雪の増加により、雪解けが遅くなって地面がジメジメし始め、次第に湿原に移行したようである。溶岩が水を通さなかったのも湿原形成に働いたと言われている。
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みどころ

鈴木牧之は、名著『北越雪譜』で、「苗場山」について「越後第一の高山なり。…絶頂に天然の苗田あり。依て昔より山の名に呼ぶなり。峻岳の巓に苗田ある事甚奇なり。」と述べている。山頂にたどり着いたときの驚きには凄いものがある。
 もっとも美しいのは紅葉期で、全山錦に染まる。眺望もすばらしく、鳥甲山(とりかぶとやま)、谷川連峰を望む。(溝尾 良隆)
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補足情報

*深田久弥は日本百名山で「苗場山は奥山で、街道筋から見えない。そんな隠れた山に、どうして古くから社が祀られたり参拝者が登ったりするほど、あがめられたのだろうか」と疑問を呈し、徳川時代から名山として登られていたのは、「時たま高いところに登った時、前山の彼方に立派な山を見つけて」「一ぺんその山を見たら、その名を問わずにはおられない特徴を持っている。すぐれた個性は、どんなに隠れようしても、世にあらわれるものである。」と述べた。
関連リンク 観光立町宣言湯沢町(湯沢町)(WEBサイト)
関連図書 鈴木牧之編撰『北越雪譜』岩波文庫、1978年3月
参考文献 観光立町宣言湯沢町(湯沢町)(WEBサイト)
森 雪 知恵 賢者のさと栄村・秋山郷里(栄村秋山郷観光協会)(WEBサイト)
雪国観光圏(一般社団法人雪国観光圏)(WEBサイト)
小泉武栄編集『図説 日本の山-自然が素晴らしい山50選-』朝倉書店、2012年6月

2022年06月現在

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