長瀞岩畳ながとろいわだたみ

国指定名勝及び天然記念物の「長瀞」は荒川中流にある峡谷で、皆野町親鼻橋から長瀞町高砂橋に至る延長6kmと、その沿岸地をいう。
 さまざまな形の巨岩を縫って荒川が淵瀬をつくって流れ、対岸には高さ数十mの秩父赤壁と呼ばれる岩壁がそそり立つ。秩父赤壁の名は、三国志で有名な中国長江の赤壁にちなんで名づけられた。
 長瀞における巨岩の典型を示す岩畳と岩壁は大規模な地殻の変動による。秩父赤壁を断層面にして褶曲がおこり、圧力を受け対岸に巨大な岩畳がせり上がった。巨大な一枚岩である岩畳は結晶片岩などの変成岩で、薄くはがれ、側面に褶曲のうねりが観察できる。また荒川の水流によりさらに変化形成され、甌穴やむかしの川の名残である四十八沼もみられる。一帯は地質学研究に好適で、「地球の窓」、「日本地質学の発祥地」などとも称されている。
 急流を下る川下りが人気。川下りの乗降船所は長瀞駅から徒歩5分の岩畳からと、上長瀞駅上流の親鼻橋から。岩畳から終着の高砂橋までは約30分、親鼻橋~高砂橋は1時間である。
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みどころ

瑞々しい新緑や色鮮やかな紅葉の季節の長瀞は特に美しい。河岸で岩畳をじっくりと見たり、スリルもある川下りを体験して、長瀞の良さを感じたい。親鼻橋のたもと付近では紅簾片岩が見られる。
 戦前、交通が不便な時代、長瀞は県内や東京都から近距離にあり、理科(地学・地質)の勉強に好適地であって、よく知られた所であった。「ジオパーク」の考え方が浸透してきて、ようやく地学・地質への理解が高まってきたが、それでも難しい分野である。「地球の窓」、「日本地質学の発祥地」の長瀞で、改めて学んでみたい。(溝尾 良隆)
関連リンク 一般社団法人長瀞町観光協会(WEBサイト)
参考文献 一般社団法人長瀞町観光協会(WEBサイト)
『埼玉県の歴史散歩』山川出版社、2005年

2020年04月現在

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