男体山なんたいさん

中禅寺湖の北岸に円錐形の雄大な山容を見せてそびえ立つ、日光火山群中の雄峰。高さ2,486m。中禅寺湖の水面上からの高さは約1,200mほどで、裾野は長く、大きく、日光市街近くにまで達する。頂上北側に直径約800mの爆裂火口跡があり、山頂からは放射状に薙(なぎ)と呼ばれる涸れ谷が発達しているほか、北側には固まった溶岩が尾根状になり戦場ヶ原へ伸びている様子も見られる。
 第四紀に噴出した日光火山群のうち、奥白根山とともに、最後に形成された新しい火山である。火山体の構成は火山灰・火山砂礫・輝石安山岩など火山岩層の堆積による標式的な成層火山で、火山の基底は秩父古生層と、これを貫いて噴出した花崗岩類である。男体山噴火の溶岩流は大谷川をせき止めて中禅寺湖を形成し、また一部は荒沢を下って含満ヶ淵の景勝をつくった。噴火の末期には多量の軽石流を流出して、湖水であった戦場ガ原一帯を埋めている。山体はよく原形を残しているが、薙の発達に見られるように、風雨による崩崖が続いている。
 男体山は、二荒山・黒髪山・国神山とも呼ばれ、古代から山霊の静まる山として崇敬を集めてきた。奈良時代、782(天応2・延暦元)年に勝道上人が初めて登頂に成功したと伝え、以後、信仰登山が盛んに行われた。三角点のある南西の峰に二荒山神社の奥宮があり、現在も山全体が二荒山神社の神域である。7月31日夜の登拝大祭には大勢の登山者が夜道を登りご来光を拝む。
 山頂の眺望はひろびろとして、中禅寺湖・戦場ヶ原を足下に、うねるような日光の山なみの果てに関東平野を望み、秩父連山や上州・会津の山々が空に浮かぶ。7~8月、頂上付近の潅木帯には、コケモモ・イワカガミ・シラネニンジンなどの高山植物が多く見られる。
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みどころ

深田久弥の『日本百名山』にも登場する栃木県を代表する山である。
 中禅寺湖の北岸にそびえる独立峰で、遠方からも目立つその姿は雄大で美しい。男体山と中禅寺湖との組合せがすばらしく、明智平展望台、立木観音、半月峠など、各所から見事な眺望を得ることができる。
 二荒山神社の御神体山で、古来より山岳信仰の御山として多くの崇敬を集めきた。山頂には二荒山神社の奥宮があり、登山の際には心してお参りしたい。(溝尾 良隆)
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補足情報

*登山には、登拝大祭期間を含め二荒山神社中宮祠の社務所で登拝の手続きをすること。信仰の山であるから、社殿に参拝後、登拝門をくぐって登山を始める。