中禅寺湖ちゅうぜんじこ

男体山の南麓にあり、日光国立公園の湖沼の中で最も大きく、日本の代表的な高山湖に数えられている。
 面積11.9km2、水色は深緑色から藍色まで季節によって変化する。新緑・紅葉のころはひときわ神秘的である。
 湖水は東西に細長く、北岸の汀線はほぼ直線に近いが、南岸は出入りに富む沈降型汀線となり、八丁出島をはじめ岬が多く、美しい入江が見られる。秋の湖畔は関東きっての紅葉の名所として知られている。
 男体山の噴火によって流出した溶岩が大谷川の渓谷をせき止めて形成された堰止湖といわれるが、水深は日本第7位、最大深度163mであり、華厳ノ滝の滝壷よりさらに66mほど下に湖底があることになり、男体山噴火以前にも非常に深い渓谷であったと考えられる。
 湖底堆積物は、群馬県榛名山の噴火による榛名軽石の厚い層の上に白根山の火山灰層があり、その上に男体山の土砂が重なっている。堆積物が砂質のためか、湖底に吸着性があり、また深湖であることから湖水の対流現象があって真冬でも全面結氷しない。
 広い湖面に秀麗な男体山の姿を映し、湖岸には中禅寺温泉や菖蒲ヶ浜キャンプ場がある。夏は湖上でボート遊びが楽しめるが、水温が低いため水泳には適さない。もとは魚類が棲まないといわれたが、1873(明治6)年から放魚が行われ、4月~9月の期間中にはマス釣りが楽しめる。
 中禅寺湖の美しさ、湖水でのレクリエーション、冷涼な夏の気候から、19世紀後半から20世紀初頭にかけて多くの国々の別荘*がみられた。
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みどころ

中禅寺湖では、四季折々に様々な自然を楽しむことができるが、初夏のツツジや秋の紅葉はことさら美しい。中禅寺湖遊覧船に乗って水上からの景色もすばらしい。また、明智平展望台、半月山展望台、茶ノ木平からは中禅寺湖の眺望を楽しめる。
 明智平展望台へは、中禅寺湖畔からアクセスする場合、一度いろは坂(第1いろは坂)を下り、再度いろは坂(第2いろは坂)を上ってアクセスする必要があるので注意。
 中禅寺湖~茶ノ木平間は、現在通行止め。(溝尾 良隆)
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補足情報

*多くの国々の別荘:中禅寺湖畔は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、国際的な避暑地として栄えた歴史がある。全盛期には40を超える国の別荘地があったとされ、”夏は外務省が日光へ移る”と言われたほどである。”絵のように美しい””イタリアのコモ湖を思わせる光景”とも言われたように、故郷を懐かしんで、特に欧州の外交官等が中禅寺湖畔に集い、ゆっくりと景色を眺めたり、ヨット遊びに興じたりした。現在は、イタリア大使館別荘記念公園、英国大使館別荘記念公園として整備され、一般のお客様が当時の歴史に触れらえるようになっている。