袋田の滝ふくろだのたき

福島県から茨城県へと流れる久慈川*の支流滝川にかかる滝。滝は4段から成り、高さ120m、幅73m。成因は、1,500万年前に形成された火山角礫岩層の硬い岩石に対し、滝の上下が浸食されやすい凝灰質の砂岩や頁岩だったため、硬質の火山岩が残り、節理と断層面が浸食され段差が生まれたと、考えられている。滝の途中に四本の大きな節理があり、4段に分かれて落下しているので「四度ノ滝」ともいわれている。
 滝から月居山(つきおれさん)へ滝を見下ろしながらのハイキングコースが続いている。滝の上流約200mには小規模ながら美しい生瀬滝(なませだき)がある。観瀑台からの帰りには、トンネルを通らず吊り橋を渡り対岸を散策しながら戻ることも可能だ。
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みどころ

長さ276mの「観瀑トンネル」を抜け、その先にある屋根付きの第一観瀑台から滝を間近に見上げるようにして観賞することになる。さらに第一観瀑台の裏手のトンネル内には3つのデッキのある第ニ観瀑台へ昇るエレベーターが設置されており、高い視点から滝全体を見渡せる。
 日本三名瀑の一つといわれ、華厳の滝や那智の滝に並び称される。このため、西行法師をはじめ、徳川光圀*など文人墨客の訪問も多く、数々の詩歌を残している。
 この滝は、高さもあるが、広い滝幅に水流が滑らかに落下していく様はまさに白絹を垂らしたような姿である。また、周囲の景観と合わせ四季折々の姿を見せてくれる。春の新緑、夏の陽光に光る豊富な水の流れ、秋は紅葉に映え、何と言っても氷瀑となる冬は見ごたえがある。
 滝の近くには民間の有料駐車場が、滝の1kmほど手前には町営の無料駐車料(2箇所)が整備されている。
 町営駐車場からは渓谷を眺めながら滝までの散策を楽しみたい。(志賀 典人)
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補足情報

*久慈川:茨城県、福島県、栃木県の3県の境に位置する八溝山(標高1,022m)から発し、福島県から八溝山地と阿武隈山地との間を流れ、茨城県大子町を経て、日立市と東海村の間で太平洋に注ぐ。 本流は124km、支流を含めると527km。久慈川の名の由来は『常陸国風土記』にある「古老曰自郡以南近有小丘體似鯨鯢倭武天皇因名久慈」(古老のいへらく、郡より南近くに小さき丘あり。かたち、くじらにに似たり。倭武の天皇、よりて久慈と名付けたまひき)からといわれている。上流にある渓谷を中心に八溝山などを含む山地、山間部は、福島、茨城県両県とも県立の自然公園に指定している。福島県側にある矢祭山公園の矢祭山(標高383m)周辺は花崗岩の奇岩怪石に富み、白い岩肌の峰にアカマツやネギシなど緑が映え、4月にはサクラ、5月には5万本の自生のツツジが全山を彩り、秋は紅葉が見事だ。また、鳥獣保護区として指定され、約90種類以上の鳥獣が生息し、バードウオッチングも楽しめる。また、アユの生息数も多く、アユ釣りのメッカとなっている。久慈川の支流には「袋田の滝」の他にも滝が点在し、山襞には温泉も湧く。各所にキャンプ場やハイキングコースなどがあり、家族連れに最適。久慈川の冬の風物詩としてシガがみられる。名産品としては北限のお茶である奥久慈茶がある。
*徳川光圀:観瀑台の石板には「花もみぢ経緯(よこたて)にして山姫の錦織出す袋田の瀧」西行法師、「いつの世もつつみこめけむ袋田の 布引出すしら糸の瀧」徳川光圀、「もみぢ葉を風にまかせて山姫の しみつをくくるふくろ田の瀧」徳川齊昭、「御空より巌を傳ひて飛落ちてすべりて散りて四度の大瀧」大町桂月の4人の詩歌が記されている。