笠間稲荷神社かさまいなりじんじゃ

京都の伏見稲荷や九州の祐徳稲荷、あるいは愛知の豊川稲荷と並び称される稲荷大社。市街の中央に鎮座し、両側にみやげ物店が立ち並ぶ仲見世を抜けると、朱の大鳥居、楼門、拝殿、本殿*と堂々とした建物が並んでいる。
 創建は651(白雉2)年と伝えられる。クルミの木の下に小さな祠が祭られたのが始まりといわれ、「胡桃下稲荷」*とも呼ばれる。祭神は宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)で「稲に宿る神秘的な精霊」を表し、生命の根源を司り、食物の神、農業の神としてのみならず、殖産興業の神として崇敬されてきた。このため、歴代領主の祈願所としても栄えたが、明治以後はとくに発展し、現在でも全国から多くの参拝者が訪れる。
 本殿裏には、笠間稲荷美術館があり、笠間焼が影響を受けたといわれる信楽、常滑、瀬戸などの中世六古窯の古陶器を展示している。追儺式(節分)・初午祭(2月初午)・御田植祭(5月10日)など、多彩な神事、お祭りがあるが、10月中旬~11月下旬に開催される、菊まつり*はとくに華やかだ。
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みどころ

京都の伏見伏見稲荷などと並び称される社だけあって、門前通りの賑わいも心浮き立たせるものがある。参道には、屋敷神用のお稲荷さんの小祠を専門に扱う店もあり、街歩きが楽しめる。
 楼門、拝殿などは昭和30年代に建設されたもので、比較的歴史は浅いが、くっきりとした朱の色が鮮やかで、神社らしい霊験あらたかな雰囲気を醸し出している。拝殿の横から裏手に回り、1861(万延2・文久元)年に建立された本殿を見上げると、その外壁に見事な木彫りが施されており、必見。絵馬殿は明治期の大変風情ある建築物だ。(志賀 典人)
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補足情報

*本殿:安政・万延年間(1854~1860年)再建。権現造、銅瓦葺総欅。 外壁三方に七面の「蘭亭流觴曲水の宴」が精巧に彫られている。
*胡桃下稲荷:「紋三郎稲荷」とも呼ばれる。これはた江戸中期、笠間藩主井上正賢の一族である門三郎が、利根川流域で功徳を施し、信仰を広めたことから「お稲荷さんの門三郎」といわれ、その「門」が転化し「紋」となったという。
*菊まつり:笠間の菊まつりとして開かれ、神社では大菊花展や菊人形展がも催される。境内は色とりどりの菊であふれる。
関連リンク 笠間稲荷神社(WEBサイト)
参考文献 笠間稲荷神社(WEBサイト)
笠間稲荷神社◎社報「胡桃(くるみ)No.44」(2019年6月発行)
パンフレット「笠間稲荷美術館」
笠間市(WEBサイト)

2020年12月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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