蔵王温泉ざおうおんせん

蔵王連峰の西麓、標高約880mに位置し、背後に広がる蔵王スキー場の基地としても賑わう温泉で、奥羽三高湯*の一つである。街の中央、高湯通りを中心に数十軒の旅館が軒を連ね、硫黄の臭気が鼻をつく。伝承では、西暦110年、東征中の日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の家臣吉備多賀由(キビノタガユ)が戦いで傷ついた折、この湯を見つけ、完治したという。当初は、発見者にあやかり、多賀湯温泉とよばれ、それが高湯になったともいわれる。江戸時代には蔵王権現の信仰登山の基地ともなったが、明治以降は湯治静養の静かな温泉地であった。大正末から昭和に入ると、スキー場が開設され温泉及び高原リゾートとして発展してきた。第二次世界大戦後、蔵王山が観光地として人気が高まったことから、高湯から蔵王温泉に改称した。周辺には、ホテル・ロッジも多く、山の湯のひなびた味わいと、近代的な明るさが調和した温泉である。
 湯量は豊富で5つの源泉群と47の源泉を有している。温泉街には上湯、下湯、川原湯の3つの共同浴場や足湯、お土産物屋、飲食店が点在し、高湯通りの先の石段をのぼると酢川温泉神社*もあって、そぞろ歩きが楽しめる。また、温泉街を見渡す山の上には渓流に向かって段々式になっている大露天風呂*もある。泉温は45℃~66℃、泉質は酸性・含硫黄-硫酸塩・塩化物温泉(一部含鉄あり)で、Phが1.25~1.6と酸性度が高いのが特徴 。
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みどころ

温泉とスキー場が隣接し、高原リゾート的な面と古き良き温泉街が併存しており、幅広い層の訪問客が楽しむことができる。旅館の内湯はもちろんだが、3つの共同浴場や大露天風呂などを巡ることで、より泉質・湯量ともに素晴らしい温泉を満喫できる。「湯めぐり入浴券」を購入すると、いろいろな旅館の「湯」を周遊することができる。
 温泉街には各種の土産物店はもちろん、伝統の高湯系こけし店やおしゃれカフェもあり、温泉街の散策も楽しみのひとつだ。また、周辺の山々やドッコ沼、ブナ林などの自然の中をトレッキング、レンタサイクルの高原サイクリング、ダウンヒルも魅力的である。
 スキー客の減少もあって国内の訪問客が停滞気味だが、インバウンドが増えつつあり、この温泉ならではの新たな魅力の発掘に期待したい。(志賀 典人)
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補足情報

*奥羽三高湯:信夫高湯(高湯温泉)・白布高湯(白布温泉)・最上高湯(蔵王温泉)をいう。
*大露天風呂:上流側の2つが女性用、下流側の2つが男性用。渓流の音を聞きながら自然石で組まれた大露天風呂を楽しむことができる。
*酢川温泉神社:三代実録に873(貞観15)年、従五位下と記されている古社。蔵王山の龍山上に本宮、熊野岳に離宮、蔵王温泉のこの宮が口の宮で三宮一社の形態である。

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